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攫われた2名の生徒
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「ーー 俺たちの戦いは "問い" 。
ヒーローとは、正義とは何か。この社会が本当に正しいのかひとりひとりに考えてもらう!」


合宿中の雄英を襲ったヴィラン連合開闢行動隊に攫われた爆豪勝己は、連合が拠点としているBARに身柄を拘束されていた。


合宿中に今年二度目のヴィランの襲撃を許した雄英の校長と1年ヒーロー科の担任二人が会見で謝罪している様子がTVで流れている。
奇跡的に死者は出なかったものの、生徒の殆どが毒ガスによる意識不明の状態。そしてプッシーキャッツのメンバーの一人が大量の血痕を残して消え、二人の生徒が攫われたとなっては流石の雄英もUSJ事件の時のような強気の姿勢ではいられない。


「俺たちは勝つつもりだ。なあ、爆豪君……君も勝つのは好きだろ?…ああ、もしかしてはなこが心配か?彼女なら別室で手当てして休ませてある」


そして死柄木は爆豪の拘束を解くよう荼毘に指示する。暴れるぞこいつと荼毘は爆豪を見て忠告するが、死柄木はスカウトだから対等に扱うと言って拘束を外させた。


手首の拘束が取れた爆豪が"まだ"大人しくしていた時だ。BARの奥のに通じる扉がひとりでに開く。


「……!!」


現れた人物に爆豪は一瞬目を見開いて驚いた。そこに立っていたのは 最後に会った時から随分変わり果てた姿のはなこで。
頭、両腕、左足…身体のいたる所に包帯を巻き、グレーのパーカーの左半分が赤に染まっている。


「おい…何してんだ」


「私だって止めたわ。でもアンタに会いたいって言って聞かなかったのよ」


「俺に…?」


自分一人の力で立っているのが不思議なくらい顔色が悪い包帯だらけのはなこにトガはうっとりしている。


ゆっくりとカウンターの中を通って拘束された爆豪の方へと歩くはなこ。片眼を使い果たし、体力的にも限界。そしてなによりどんな理由であれ兄に手をかけたはなこを無理に止める者はいない。


『…死柄木…弔……。私も目的…なんだよね…。だったら…私は…連合に、入るから…爆豪…君はやめて…』


「な」


耳を疑う台詞に爆豪は驚きと怒り、そして焦りが混ざった感情とともに瞬時にはなこの方を見る。
いつもヘラリとした顔で笑っていたあの面影はどこにもない。
爆豪が焦りの感情も感じたのは、はなこの話を死柄木が聞き入れる可能性が十分にあると考えたからだった。


「テメェ何勝手なこ『黙って』」


例えばはなこも連合に入る気が無い場合、これだけのヴィランに囲まれた中とはいえ二人に暴れて逃げられる可能性も少なからずある。
しかしはなこが確実に手に入るとなれば、死柄木が爆豪を諦めてリリースするという可能性だって出てくるはずだ。


ーーー バタッ


突然はなこが倒れた。何の前触れもなく。


「…気にせず続けてください。」


「テメェ…」


はなこが出てきた扉に、今度は青離が壁にもたれかかるようにして立っていた。
ボロボロの服に包帯の巻かれた両腕。会うたびに余裕げで、妖艶かつ儚い笑みを浮かべて眉目秀麗の面影はない。
よく見ればはなこの立っていた足元に青離の創造するゲートが渦巻いていて、はなこの身体を取り込むとカウンター席のテーブルワープさせたゲートから落として寝かせた。


「生きてたのか」


皮肉を込めた笑みで青離にそう言った荼毘。


「まあね。」


「話を戻そう。ここにいる者は事情は違えど、人に、ルールに、ヒーローに縛られ……苦しんだ。君たちならそれを…………」



爆豪に歩み寄っていく死柄木。


ーーー ボォオオオン!!!!




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