×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
________________________
重傷の手前と合流した5人
________________________


.

ポタ…ポタ……ポタ……

時折雲で隠れる月明かりが照らす森の中。
枯葉と木の枝が埋め尽くす地面に赤い雫が落ちる。

青離のゲートに引きずり込まれた後、
轟と爆豪がいた位置から少し離れた場所に放り投げられた。鎖に縛られた身体では抵抗もできないまま、大きな木に鎖ごと叩きつけられた。
身体を縛っていた鎖はそれと同時に消えた。

前に青離の襲撃を受けたのは左肘と左耳。
感覚がないのは左腕だけで左耳の方は普通の傷だった。
しかしどうやら木に叩きつけられた時に治りかけていたその傷を瘡蓋ごと抉ったらしい。

耳ごともがれたような痛み。どくどくと生温い血液が耳から顎を伝って流れる。
押さえても止まる気配は無い。

『ゲホッゲホッ……(あー…頭揺れる…耳が熱い)』

青離とはなこは強個性や特殊個性"のみ"で個性婚を繰り返してきた結家の現代当主の子供。ぶつかり合えば自分もタダでは済まない。
焼けるような痛みに、尋常じゃない量の出血。

ーーー 青離を斃さないと。

家の祖父や父はカミサマの様な存在だと昔から思っていた。言われるがままに育ち、言われるがままに兄妹達に個性を向け、最強の力を持ったヒーローになる人生を一瞬で奪った。

あの日からヒーローになりたいという願望も、誰もが抱くような憧れもないのに、言われるがままに "最強の力を持ったヒーローへの道" を歩いていた。

ーーー 青離を斃さないと、

彼は、青離という存在は…はなこにとって脅威だ。同世代の兄妹で争って生き残った当主候補同士、当主決めのために何度闘わされたかわからない。

青自分とそっくり同じ個性を持つ青離。
自分を鏡に映したような存在。

いつかカミサマに言われた言葉がある。
" 同じは要らない "
" どちらが優秀で、どちらが劣化版だ? " と ーー。

他の当主候補の誰と闘うよりも一番闘い辛く、その度に互いに大きな怪我を負った。
そして数年前、何十回目かも分からぬ当主決めの闘いではなこが初めて青離に勝利。

そしてその夜、青離は家を出た。




個性の応用と経験は、数年前に家を出てヴィランと化した青離の方が何枚も上手だ。

でも、ここで倒れるわけにはいかない。

「俺がこの前放った矢は10本。そのうち感覚を奪う矢は1本だった。…"劣化版"のくせに随分と運が "良い" ね?」

青離も無傷では無い。

青離が爆豪と轟に話し掛けている時に放った二十羽程の黒い鳥。アレには敵に触れると同時に刃物に変わる創造が施しておいた。
腕や横腹の服が裂けて出血しているのはその所為だ。

ーー ドォオオオオン!!!

「………あー…、ムーンフィッシュさんやられたか。なら俺もそろそろ片付けるか。はなこの後は爆豪君も残ってるし」

『…ゲホッ…爆豪くんも(連合の)目的のくせに半殺しにするとか、意味がわからない』

「彼、焦凍君が勝ちを譲ったにせよ雄英の体育祭一位だし連れて帰るには骨が折れそうだから。俺の創造なら半殺しにしてもあとで完全に治せるし。

…だからまぁ、そろそろ決めようか。どっちが"優秀"で、どっちが"劣化版"か」

例えば爆豪の腹を大きな槍で貫いて半殺しにしたとして、" ただし後で青離が爆豪の肩に触れればその傷は無かったことになる " ーーー そういう槍を青離は創造することができる。

『…私が生きる。劣化版は…』

ーー オマエだ。




一方、先程まではなこがいた場所では
暴走した常闇の個性-ダークシャドウ-が現れ歯の刃の個性を持ったヴィランを一撃のもとに撃退し、爆豪と轟は常闇、障子、そして障子に背負われているボロボロの緑谷と合流していた。

「爆豪と結……?命を狙われているのか?何故……?」

ダークシャドウの暴走でマンダレイのテレパスを聞いていなかった常闇は驚いた顔でそう言った。

「はなこの理由は大体予想がつく。前に死柄木自身に連合にスカウトされてるからな。…はなこは兄貴が出てきて、ゲートみてぇなやつに引きずり込まれた。」

はなこと殆ど同じ個性だが、どういうわけかUSJの時にいたワープさせるような事もできるらしい…と轟は付け加えた。

「はなこも兄貴の方もお互いを本気で殺そうとしてる。嘘か本当かわかんねえが兄貴のやつの話だと、はなこは家に兄貴を殺すよう命じられたらしい。」

早口の轟。
そしてそれを聞いた緑谷は "兄貴"、"同じ個性"という青ざめる。

「……本当の話…だったんだ」

「……あ?」

また何か知ってて考えている顔だと察した爆豪は不満げな顔で早く続きを話すよう促した。
全員の視線が緑谷に集まった。

「…実は結さ…はなこちゃん、肝試しが始まる前に僕に質問してきたんだ。戦闘関連のことだって。……その内容が、殆ど同じ個性の相手にどう闘うか…で…相手はお兄ちゃんだって言ってたんだ。…それでその後ピクシーボブがヴィランに襲われて、気づいたらはなこちゃんはいなかった」

その話、事実を知り全員が驚いた反応した。

轟と爆豪は謎が解けた。なぜ肝試しで一番最後の順番でまだ出発していない筈のはなこが来たのかを。

.

prev next