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闇はすぐそこまで来ていた
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「ていうかこれ嫌。可愛くないです」
サイドで髪をお団子にして纏めた女子高生が不満げにバタバタと腕を上下させている。
「裏のデザイナー・開発者が設計したんでしょ。見た目はともかく利には適ってるハズだよ」
女子高生の不満に応えたのは、その女子高生のすぐそばに立つ学生服姿にガスマスクの少年。
この二人以外にも、身体中で焦げた肌をつなぎ合わせた男や、大柄の体に仮面をつけた男がいる。
「そんなこと聞いてないです。可愛くないって話です」
「どうでもいいから早くやらせろ…ワクワクが止まんねえんだよ…」
「黙ってろイカレ野郎共。まだだ…決行は…十一人揃ってからだ」
彼らはヴィラン。
ヒーロー科国内最高峰の雄英高校の卵達が合宿を行う敷地内の崖。闇はすぐそこまできていた。
「すいません荼毘さん。遅れました」
ジャリ…と小石と砂の混ざった地面を踏む音。
荼毘と呼ばれた男はポケットに手を入れたまま、顔だけを足音の方へ向ける。
そこへやってきたのは、ラフな私服姿に眉目秀麗な顔立をした青年。
「あーっ!青離くん!トガです!お久しぶりなのです…。そうそう、今日 青離くん死んじゃうって聞きましたぁ。血、貰ってもいいデスか?」
興奮気味に青離に駆け寄ったのは、髪を両サイドでお団子にした女子高生ことトガヒミコ。そんなトガに「ダメ」と綺麗な笑顔で応えた。
その部分だけ切り取れば、ヴィランには見えないだろう。
「おいイカレ女、コイツの妹と接触しても血は絶対とるなよ」
「残念…結兄妹の血…どっちか欲しかったなぁ」
「青離。お前は死にかけたら連絡をよこせ。連絡寄こさずに死ぬなよ」
「わかってますって。あっさり言うけどそれ、超高等テクですよ」
その足音は静かに、確実に ーー。
「まぁ、俺を殺せって命令の後から多分個性の使い方変えてくると思うんで、ちょい早めに連絡します」
「おいおいやる前から弱気か?ピンピンの状態で(はなこ)寄越すなよ。俺もやる事がある」
「善処します。とりあえず本気で半殺しまで詰めるんで、そっからのことは本当に頼みますよ」
「ああ」
少年の目に迷いはない。
やり方は間違っているかもしれない。いや、間違っている。どんな理由であれ、傷つける事に変わりはないのだから。
でもこれは、これまでの人生は全て
最愛の妹であるはなこのため。
だからやり通す。
そしてその全てを知るのは、今隣に立つ荼毘と連合の頭である死柄木弔だけ。
青離は、はなこを彼らに引き渡す為の橋となる。
「まぁ、はなこは任せろ。」
本当なら、妹を導いて共に生きたかったであろう青離に荼毘は思う。無論口には出さないが。
良かったな、お前はイカレる前に死ねるんだと。
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