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魔獣!!!
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「私有地につき個性の使用は自由だよ!今から三時間、自分の足で施設までおいでませ!この魔獣の森を抜けて!」

バスへと走った1年A組の生徒はピクシーボブの個性である土流に呑まれ崖の下へと流された。完璧な個性コントロールのお陰で地面は柔らかく、誰一人叩きつけられることはなかったが状況が最悪なことには変わりない。

「魔獣の森………!?」

「なんだそのドラクエめいた名称は………ってはなこ!おまっ…腕!血出てんぞ血!」

直ぐ隣でしゃがんでいたはなこが立ち上がるなり、上鳴ははなこの包帯の巻かれた左腕を指差す。夏服の半袖から手首までを覆う真っ白な包帯の肘辺りが赤く滲んでいた。
(マンダレイ)やり過ぎだろ!と瀬呂や麗日が心配げな顔で寄ってくるが『ちょっと傷口開いたかも。"今ので"じゃないから大丈夫だよ』と"いつもの笑み"を浮かべて警戒を促した。

『それより前。…来るよ』

傷口に関して突っ込みたいところだったが、はなこの言った通り、前からただならぬ嫌な気配を察知したクラスメイトは身構える。

________…それを少し離れた背後に立つ爆豪がそれをジッと睨んでいたことは誰も知らない。
包帯の赤く染まった細い腕を睨んでいた理由も。(爆豪くんに送ってもらいましょう編)

すると。
ゴゴゴゴゴゴ…………!!!!
と聞いたことも無いような不気味な低い音を立てて巨大な"魔獣"がA組の目の前に現れた。

「マ''ッ……マジュウだーーーー!?」

瀬呂と上鳴の叫び声。

すると魔獣は、土流に流された直後に(何故か)股間を抑えて先行して行った峰田を認識し、ゴツゴツした大きな手を振りかぶった。
動物を従える事の出来る個性を持つ口田が「静まりなさい獣よ!下がるのです!」と走りながら呼び掛けるが全く功を奏さず。

魔獣が振りかぶった手を振り下ろした瞬間_____________緑谷が現れ、一瞬で峰田を抱えて救出。

それに続いて轟がその魔獣の動きを止めて飯田と爆豪が魔獣を身体を砕き、緑谷のトドメのパンチで魔獣は倒れた。

「あの魔獣を瞬殺かよ!」

「やったな!」

…先行した轟に佐藤と瀬呂が"もう終わった"かのような顔で歩み寄る。

「流石だぜ爆豪!」と褒めてきた切島に爆豪は「まだだ」と前を見たまま応えるた。________…すると爆豪の言った通り、彼が警戒して見つめていた先…そして上空からゴォオオと魔獣の鳴き声や羽ばたく音が聞こえた。

そんな彼に流石だなと思いながら、
はなこは静かに歩いて爆豪の隣を通り過ぎ、クラスメイトの少し前に背を向けて立つ。
包帯に血の滲んだ左腕が痛々しい。

そして…突然降り出した雨が水溜りを打つようにはなこの両サイドの空間に次々と現れる渦巻く煙______________その中心から顔を出す一見硝子細工にも見える透明のミサイル。

創造ゲートの数に容赦がない。
はなこが今どんな表情をしているかは、誰にも分からない。

「なんか前見たミサイルと違くねーか!?」

直後…創造ゲートから容赦なく一斉放射された透明なミサイル(の様なもの)は、隠れていた魔獣も上空を飛んでいた魔獣さえも動きを捕捉し、爆発した。

それもただの爆発ではない。
魔獣は土塊。その透明なミサイルは爆破とともに魔獣の体内で大量の温水を放出し、再生の可能性を断つ、内側から完全に破壊する爆発だ。

「強個性さすがやね…」「ケロ…」

「温水………!
魔獣は土塊だから弱点を………いや、だとしても数匹をたった一人で片付けるなんて…。弱点を完璧についた無駄のない攻撃…しかも一瞬見えただけの魔獣と空を旋回して見え辛かった魔獣を一回の攻撃で仕留め切った瞬間的な状況判断と……」

『………緑谷くん?』

「うわっ………ごめん!!!」

どんな状況でも分析を怠らない緑谷。はなこの一掃攻撃で一瞬余裕ができたとはいえ、大変なのは"これから"なのに変わりはない。
はなこに肩を叩かれて正気に戻った緑谷は、目の前の敵に向かって地面を蹴った。

他のクラスメイトも走っていく。
はなこもそれに続いて一歩足を踏み出した時だった。

「やんなら血止めてから走れや」

その声が聞こえた直後、声の主は爆風と共ずっと先にいた。
いつのまにか肘辺りから滲んだ血は包帯の中で腕をつたい、小指からポタポタと垂れていた。個性を使っていたのと、血の生ぬるさから全く気がつかなかった。

『……』

この傷の原因は、彼しか知らない。

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