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オールマイトの抱擁と、
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緑谷と話を済ませたオールマイトは緑谷を母親に引き渡すと、あらかじめ塚内に頼んで署内で待たせておいたはなこのところへ向かった。
勿論マッスルフォームになって。

はなこは"個性複数持ち"のヴィランに記憶を奪われている。そしてこの部屋に来るまでに塚内から聞いたはなこの事情聴取、つまりはなこが敵連合のリーダー格である死柄木から直接スカウトを受けた事と、その際に言われた事を聞いて直接話すべきだと踏んだのだ。

はなこ自身の身体には記憶を奪われた以外何もされなかった不可解な事件からオールマイトだけは嫌な予感を感じていた。

"個性の複数持ち"……もしかするとオール・フォー・ワンがはなこを狙っているかもしれないと________…。

「……結少女…すまない!君を危険な目に合わせてしまった」




ドアを張り倒す勢いではなこの待っている部屋に入り、その勢いのままオールマイトははなこを強く抱き締めた。

「オールマイト…結さんをお願いします。
結さんは僕とは真逆で生きてきた環境がまるで違うから…簡単に知ったようなことは言いたくなくて…。結さんは死柄木に言われたこと、気にしてないって言ったんです。…僕はそれが嘘だってすぐにわかったのに…………何も言えなくて」

はなこを強く抱きしめる中でオールマイトは、緑谷にはなこを託されたことを思い出す。
確かに緑谷の言うとおり、無個性で生きてきて、高校に入学する数ヶ月前にオールマイトから個性を"譲渡されることで"個性を手に入れた緑谷と、"強い個性のみ"を重ねてきた家に強力かつ特殊な個性を持って生まれ、個性のコントロールから戦闘訓練、現場での状況判断等…トップヒーローになるべくして育てられてきたはなことでは生まれ育ってきた環境が正反対だ。

『苦しいです、せんせ』

そう言ったはなこの表情には疲れが見られた。

「おっとすまない…。とにかく怪我がなくてよかった」

転入してから数週間足らずだが、確実に良い方向に向かって成長を見せていた。
転入初日で教師であるオールマイトに向かってミサイルや爆発する刃のないナイフを撃つようなヒーロー志望らしからぬ行動も、周りの生徒…特に爆豪や轟、緑谷といった"分かりやすい"生徒の影響で変化を見せていた。

雄英に来て、精神的にも安定し始めていたはなこから記憶を奪ったヴィラン。そして死柄木________…。

はなこを抱きしめていたオールマイトが壁に向けていた顔は、笑っていなかった。

「座って話そうか。……君が死柄木に言われたことは、塚内君……君と緑谷少年の事情聴取をした刑事さんからさっき聞いたよ」

『…私は気にしてません。そういう風にヴィランに誑かされた事も、命を狙われた事も、殺されそうになった事も…"向こう"にいた時も何回かあったので』

向こうとは、元いた関西の事だろう。
いつも口調の穏やかなはなこが珍しく早口で喋ったことからも、精神的に相当な疲れが見られた。

『だから帰して下さい』

「疲れているところすまないがはなこ少女。今の君をすんなり帰すことは出来ない」

その表情は真剣で________…。


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