×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
________________________
作られた犯罪!囲まれた少女!
________________________
.
体中で変色した肌を縫い合わせた異様な男。はなこが鎖で拘束した大型のヴィランの前で、数メートル先に立つはなこと向き合う。
『あなた…プロヒーローじゃないですよね。さっき爆発する石から私を護ったのはなんでですか?』
この男は今、はなこに対して殺気も敵意も向けていない。けれど絶対に只者じゃないのは見れば判った。
「強いて言えばお前とこうして会話する為だ。それよりお前はもっと別のことを質問すべきなんじゃねェのか?」
見下すような笑み____________無表情だった男が表情を変えた。
『……(…プロヒーローが来ない)』
タクシーの運転手がプロヒーローを呼ぶ為にここを去ったのはもう15分は前のこと。雄英の近所で大通りも近い此処なら5分もすれば到着するはずだ。大通りを進めば一つ大手の事務所もある。
それなのに何故15分経ってもプロヒーローが駆け付けないどころか、否、"人一人通らない"のか。
『……』
恐らくこの事件は最初から仕組まれていた。
そしてプロヒーローを呼ぶ為にこの場から離れたタクシーの運転手もこの男のグル。でなければ一般的な反射神経だけで二度も危機を逃れられる筈がない。今鎖に縛られ地面に寝ている大型のヴィランがタクシーの運転席から助手席を貫通した時、よくよく思い出せば避けたタイミングが完璧すぎたようにも思える。
コンビニの爆発は行き先を塞ぐ為。
青い炎が爆発する石からはなこを守ったのは、プロヒーローが到着したと思わせる為。
そしてタクシーから降車した場所に戻らせる為。
この一連の策を練ったのが今目の前に立つ青目の男だとしたら、相手は相当な上手だ。他にも策を練っている可能性がある。
そしてそれ以上に重大な事実が一つ。この男の個性は恐らく青い炎と考えて間違いない。タクシーの運転手はグルで、プロヒーローは呼んでいない。それでも大型の男が襲撃したビルの中の者達が呼んでいたっておかしくないのに、誰もいない________…否、"誰も寄せ付けていない"この状況。
『仲間…』
この男には仲間がいる。
「半分正解だ。利害が一致しただけで仲間ではねェからな」
男がそう言った直後だ。男の右手を青い炎が覆った。
「ある奴にお前を殺せと頼まれた。それが誰だか分かるか?結はなこ」
『!…』
名前まで知られている。そして僅かな殺気…。彼はヴィランで間違いない。ここまで周到に準備を整えて、彼ははなこを殺しに来た。
『…親、ですか』
「惜しいなァ。なんか心当たりでもあるのか?」
『ヒーローにする為ならなんでもやる親だから』
先程まで身構えていたはなこは、踏み出していた足を戻して自然に立つ。ただ立っているように見えるその姿勢こそがはなこにとって、戦闘を決心したことを示していた。
.
prev
next