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野良犬を見つけた日
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数年前________…
音も気配も無く、その男は現れた。


「お前がよしだの忌子か」


朱色の仮面をした男は
一族の中で煙たがられ、
物心ついた頃から里外れに追い出された
よしだ一族の忌子、はなこに目をつけた。


『…………』


よしだ一族の血継限界"翡翠眼"の力は
全ての幻術の無効化。
敵であれば"月の眼計画"の妨げになりかねない。

加えてはなこはその眼と特殊な力…
性質である風と水を氷に変換し、氷を
自在に操る異常な能力を持っていた。


『一族の長なら赤い屋根の民家ですよ、おにーさん』


物心ついた頃から恐れられ、煙たがられ
里の外れに追いやられて一人で育ったはなこに
無論、一族に情など無い。

得体の知れない男に冷めた目つきで居場所を売った。


「俺の目的は一族じゃあない。オマエだ」

『うっそだー。あ、その赤い眼、写輪眼ですよね。
うちの一族になんの恨みがあるのか知らないけど、幻術は効かないから得意の火遁で燃やした方が早いですよ』


小柄で端麗な容姿。
少女は灰色の髪を耳にかけて立ち上がる。
何かに諦めたような表情で、退屈で興味無さげに。
殺してよとでも言うかのように…。


「そう急くな。話は最後まで聞いたらどうだ?_______________…よしだはなこ。
お前は稀に見る可哀想な子だ。」

『…………かわいそう』


あどけない表情のはなこ。
そして男は月明かりを背に、こう言った。


「俺と共に来い。そうすればお前の欲しいモノを俺が与えてやる」

________…と。

女はそのセリフに、目を細めフワリと微笑んだ。

直後、女が開いた眼は闇で朧に煌る翡翠色。

そして男が現れた時の様に、音も気配も無く
男の足元をパキパキと氷が覆っているではないか。


『…________うける』

「良い眼だ。忌子と呼ばれるだけあって瞳術はズバ抜けている」

『…』

「…が、どうやら大人しく従う気は無いらしいな。」




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