仮想現世で訓練したとはいえ、実際の現世はまさに未知の世界。

よくタイムスリップもので、車を化け物だ!って言ってるのを大袈裟なwwとか思ってたけどたかが200年先の世界で十分怖い。

政府施設から出て主先導のもと電車とタクシーを乗り継いで来たけど、その未知の世界で主の身の安全に注意を払いながら自身の行動にも気を付けるというのは訓練よりはるかに心身ともに削られる。

しかし帰省を楽しみにしていた主にそんなことを気取らせてはいけない。

「もう少しです」

そう言われてたどり着いたのはビルと車がごった返す大都会……から少し外れた場所。
とはいえ都会は都会だから人通りはあるが。

主は立ち並ぶ家屋の一つを指さした。

「あそこです」

すでに閉店の札がかかった中華料理店。少し色褪せした看板と、漏れ出る明かりが温かい雰囲気の店だった。

緊張をほぐすように深呼吸した主が横開きのドアに手をかけた。



「た、ただいま!」



刹那、主の頭上を通って真っ直ぐに私へ飛来した銀の筋。

「は?」

パンっととっさに挟みとったそれは立派な中華包丁だった。

「……は???」

「鶴丸さん!」

攻撃を認識した瞬間、小夜が戦闘態勢に入る。

が、私は飛んできた武器が武器で、それを投げつけた人物の姿も認識出来ていたからこそ、刀に手をかけるべきではないと判断した。というか宇宙背負ってた。

投擲の姿勢のまま私を睨みつける人物。
その顔はどこか主に似ていて。

「何やってるのお兄ちゃん!!!!」

はじめまして、お兄さん。



随分とバイオレンスな初対面だったが、主の怒鳴り声を聞いて飛んできたお母さんにお兄さんはすっ叩かれていた。

すぱーん!と鍋敷きで。強い(確信)

「やだもうごめんなさいねぇ。お怪我は?ない?良かったわぁ、あらいい男!お父さんには敵わないけど。五条さんって言うの、そう。遠いところからいらっしゃい。お隣は聞いてた弟さんかしら?可愛いわねー!お名前は?小夜ちゃんね!夕飯はみんな食べるかしら?食べるわよね?おとーさーん!愛娘が帰ってきましたよー!」

引きずられていくお兄さん。遠ざかる声。去る嵐。落ちる沈黙。

…………主のお母さんだよね?

「ほんと、ほんと、すみません……」

主、コミュ力全部お母さんの腹に置いてきたのでは?





[ 90/113 ]

[前へ] [次へ]

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -