現世護衛任務のための試験とは、主に「護衛能力」「対人能力」「常識力」の三つからなる。
さらにそれぞれ事細かく試験内容が分かれてたりするのだが、最終的な結果通知に記載されているのはこの三項目だ。

評価はS〜Dまでの5段階で、主の現世帰還許可を貰うにはまず護衛二振りがこの評価で平均B以上を取らねばならない。

案外簡単じゃない?と思ったそこのあなた。

大間違いだ。

まず評価Sというのはベテラン本丸の刀剣男士でも取るのが難しく、文句も助言も一切ありませんという文字通りスーパー刀剣男士の称号なので、まず無理。

そしてD評価というのは一項目でも貰うと問答無用の落第である。論外。

SでDを補うことは出来ないし、一つA評価を貰っても残りがC評価なら失格。
つまりC評価が許されるのはA評価がある場合に一つのみ。

しかも……例えば私が護衛能力でCをとった場合、もう一振りの男士は護衛能力がAという評価を相殺できる関係でなければならない。

基本的に本丸から試験を受けられる人数制限はない。が、護衛Cを貰える最低基準練度が私たちの本丸だと光忠あたりでギリギリ。

さらに護衛の枠は打刀以上と脇差以下から一振り。つまり太刀と打刀の評価で相殺できても意味がないわけだ。

狭き門がすぎる。

そして今日、本番前の仮試験の結果が返って来た。

目の前に伏せて置かれた用紙を前に、まだ結果を見ていないにも関わらず仲間達の空気は重い。第三者が見たらお通夜か?と思うほどに。

‥‥思った以上に出来なかったんだ。

護衛試験では擬似遡行軍相手に主役の人形を守りながらの戦闘をしたのだが……護衛というのにまず慣れなかった。割とすぐに破壊されてしまった人形がもし主だったらと想像してメンタルが死んだ。刀剣男士の仲間を守るのとはレベルが違う。マジムリ、なんで人間すぐ死んでしまうん?

常識試験なんて、筆記はそこそこ出来たかな?と思ったらその後の擬似現世での試験で私は車に轢かれた。あれだけ、こんのすけから言われてたのに!2200年代の交通事情まじ分からん。車のビジュアル見た時は未来だ!ってテンション爆上がりしたけど秒で轢かれたからね。泣いていい?

対人については……まあ特筆すべきことは無かった。強いて言うなら強引すぎるキャッチはいたが、ああいうのは私の場合ちょっと万屋街歩けば当たる。日常茶飯事だったのでいつもの要領でさばいてた。対応が慣れすぎてて試験官にどん引かれたくらいだ。


「覚悟はいいか」


山姥切が重い口を開く。
どいつもこいつも似たり寄ったりな感じだった中、「せーので行くぞ」なんて言われては拒否なんて出来ない。

「「「せーーの!」」」

ぴらり。

いっせいに紙をめくった途端、視界のあちこちで刀剣男士がうめき声と共に倒れ伏した。屍が転がる。

私は人間時代含めて初めて貰った落第のD評価に割とガチで泣いた。


ふるり、とこんのすけの毛艶の良い尻尾が揺れる。

「まあ初試験で突破できる本丸はあまり例がありませんから、気長にいきましょう!」

「「そういうことはもっと早く言え!!!」」

「モチベーションは大事だと思ったんですよぅ!」

その日、こんのすけの夕飯に油揚げはなかった。

「御無体な!!!」

自業自得だ!!!!
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