_____すみません、自分、政府の者なんですけどお話聞かせてもらえます?

その言葉を聞いた時、キターーー!と叫ばなかったことを褒めて欲しい。


現在私たちは政府御用達だという小料理屋の個室に通されていた。

「悪いな、昼食がまだなんだ。気分の良い話じゃないんだろ?緊急じゃないってんなら先に食べさせてくれ」

「そっちも好きに頼んじゃって良いよ。ココ美味しいからさ」

「ならこの茶そばをいただこう」

マイペースかよ鶯丸。
だが夕飯には早いとはいえ確かに歩き回って小腹が減った。
お品書きを見て食欲が刺激されたのか、小さくお腹を鳴らせた前田が赤くなる。いっぱいお食べ。

それぞれ好き勝手に注文し、部署確認もかねての自己紹介と概要を話しながら平らげ(とても美味でした)、コクリと茶を飲んだところで加州が切り出した。

「つまりその鯰尾藤四郎のいた本丸を検挙して欲しいってわけね。本丸番号と、あと鯰尾が持ってたっていう記録媒体は?」

「コピーでいいか?番号もこっちに入ってる。本物はこちらで管理させてもらうぜ」

「慎重だね」

「そりゃ事が事なんでな。君らが信用ならないとなれば、ネットに公開することも辞さんぞ」

未来的USBのようなものを渡せば、男が小型PCで中身を確認した。眉間にシワが寄っていく。

監査部にとって、見過ごすことの出来ない問題だろう。
なんせ鯰尾の本丸で行われていたのは、過剰出陣などの刀剣虐待に加えて刀剣の不正売買と横流し。

どう考えても役人、それも担当官どころじゃなくそこそこ上の人間が噛んでるんだろう。

「これは確かに、直接監査部に持ってかなきゃどこで握り潰されるか分からないな」

「うちの主はちょっといろいろあって政府への信用を無くしている。心情を理解できなくもないが政府に雇われる身としちゃ致命的だろう。これ以上不信感を募らせたくないから、主にはデータを見せていない」

これに関しては山姥切のファインプレーだったよね。
主の政府不信についてはちょっと拗らせてるから近いうちになんとかしなきゃとは思ってる。

そのきっかけとして、この鯰尾の件は然るべき対処をして欲しいところだ。

「勿論です。ただこの規模の摘発となりますと準備にも時間がかかります。それと政府で鯰尾藤四郎を保護するには監査部から担当課を通さなくてはなりません」

不正売買の件に担当の上司が一枚噛んでる可能性は高いと思う。
もしそうなら摘発を勘付かれる動きは避けたい。

「心配は無用だ。少なくとも事が済むまで鯰尾は責任を持ってうちで預からせてもらう」

そう告げると、男はお願いしますと頭を下げた。

摘発までの粗方の流れや注意事項を話し終えると、場の空気は一気に緩んだ。

「そういえばさ、前田はなんで俺たちが監査部だって分かったの?面識は無いはずだけど」

「審神者と刀剣男士の主従関係には見えませんでしたし、黒のバッジを付けていたのでもしかしたらと」

それまでも何組かそれっぽいのとすれ違いはしたけど、明確なアクションは起こしてこなかったし、黒のバッジではなかったから別部署か審神者だったんだろう。

「俺も気になっていた。鶴丸、アンタは赤か黒、白だと監査部の可能性が高いと言っていたがなぜだ?」

「色の心理効果と仕事の関連性だな。例えば対策課は注意喚起の黄色で、担当課はコミュニケーションを促す水色。
となると監査部は正義感の赤か、何者にも染まらない黒か、清廉潔白を示す白。この辺りが妥当だろう」

青も現世の警察官の制服だったりで規律や規範のイメージだけど、担当課が水色を使ってるから仕事内容的に似た系統の色は使わないだろうなと。

「あくまで印象で、学問的に決められてるわけじゃないから可能性があるってだけの話だったんだが、アタリだったな」

色の効果とか意味とかね、知ってると色々と役に立つよ。パワポとかファッションとか今の私は必要ないけど化粧にも。

「すごいですね鶴丸様」

「さすが噂の白雪の鶴」

「待っってくれそれ君らも知ってるのか!?」

ホントどこまで広がってるのそのあだ名!いつから気付いてた?見ただけで区別付けられるもん?
私は!ただの稲葉本丸の鶴!です!中身私だから普通ではないかもしれないけども!

「ほう、白雪の鶴。その話詳しく」

「やめろ興味を示さなくていい座れ着席ステイ!」

「ブラック審神者が絡むと言葉巧みに証言をとって政府に丸投げする鶴丸国永、と監査部でも有名ですね」

「手数かけてすまん」

最近はフード被って顔隠すようにしてるからそう頻繁でもないんだけど。

「いやいや逆に助かってるから!でもその反応見る限りアンタんとこの審神者も刀剣男士も知らないの?」

「初耳だな」

「……骨喰は何度も現場に居合わせてる。主にも絡まれた程度の報告はしてるさ」

検挙に関わったわけじゃないから嘘は言ってない。
万屋禁止にされたくないし、必ず同行者を連れなきゃいけなくなるのも面倒だ。

「さておき、ブラックの件は頼んだぜ。俺たちはお暇しよう」

あまり遅くなってもいけないし、加州と連絡先だけ交換して店を出た。

個人用だけどもともと欲しかったし、昨日のうちに契約しておいて良かった。

監査部の動きも教えてくれるし、今後も何かあれば連絡していいらしい。ありがたい。



***

数分後の加州たち。

「俺らも職場戻ろっか。半休無くなったけど仕方ないよね」

「後回しに出来ないからな。すみません、お会計お願いします」

「あら?お連れの鶴丸様がすでにお支払い済みですよ」

「え!?スマート紳士かよ、やだ乙女になる」

「しっかりして」

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