さて、そんなわけで私こと鶴丸国永いざ出陣!
「鶴丸兄さん、おれも甘やかしてよー」
「ねぇねぇ僕も疲れた甘えたいおんぶ」
「俺は甘やかしてくれないのか?」
「ええい!資源は受け取ってやっただろうが。汗かいた体でおぶさって来るなさっさと風呂入って来い!
鶯丸、君はすぐ調子乗るから駄目だ」
骨喰とのやりとりを見ていた奴らがふざけて絡んでくると、外野の存在を思い出した骨喰が真っ赤になって走っていってしまった。
くっ付いてくる者どもを引っ剥がし、馬を資源倉庫に誘導する。
「何をするつもりですか?」
私だけでは全ての馬を出せないので、こっそり一人落ち込んでいた前田に気分転換と称して手伝って貰っていた。
ちなみに蜻蛉切は高速槍攻略の特訓に付き合わされている。「最近、短刀に襲撃されるのを夢に見るのです……」とは蜻蛉切談。池田屋攻略のために頑張ってくれ。
前田の問いに少し言おうか言うまいか逡巡する。
「僕に手伝えることはありませんか?」
前田は鯰尾保護派と思われているけれど、その実、どちらにつくとも明言していなかった。
保護派に固まる粟田口の中で真っ向から引き渡しを主張したのは薬研だけ。
この本丸に、鯰尾が憎くて保護に反対している刀剣は一振りだっていないけど、
たとえ兄弟であっても、それが本丸のため正しいことだと判断してそれを口にしたのは薬研だけなのだ。
兄弟たちがこぞって保護を唱える仲で、一人違う答えを口にするのは堪えるし、罪悪感も一入。
きっと前田は自分も引き渡しを主張すべきだったと思っている。それが忠義だと。でも言えなかった。
どっち付かずで、保護すべきだと主張することすらしなかった。
だからこそ多分、兄弟を切り捨てる苦しみを薬研一人に背負わせたことを、ずっと悔いているのだ。
「お願いします。何かあるなら協力させて下さい」
「そうだなぁ……あまり気分の良いもんじゃないぜ?」
それでも、そこまで言うのであれば。
「やるかい?」
「やります!」
「分かった。明日空いてるかい?」
「朝から遠征が……。午後ならば」
「なら明日の午後ゲート前に集合しよう。戦装束でな」
「分かりました。どこへ行くんですか?」
まずは主に許可を取らなきゃならないから、細かい作戦は明日伝えるとして、行き先は。
「万屋だ。上手くいけばいいんだが……さて女神は微笑んでくれるかね」