ー 初期刀 山姥切国広 ー

審神者に励起された刀剣は例外や個体差あれどどこか審神者に似るという。
特に始めて呼び起こす初期刀はその傾向が強く、そしてこの本丸の山姥切国広は稲葉の影響をもろに受けていた。

つまりもともと“山姥切国広"という刀が持つこじらせた卑屈さにネガティブと人見知りが上乗せされていた。なんてこったぃ

気づいたこんのすけはorz状態になった。もとから四つ足だろというツッコミはなしで

この本丸の山姥切は下を向くことが多い。というよりほぼほぼ下を向いている。
それは性格でもあったが、なにより主に理由があった。


山姥切は己の主に怖がられている。


その原因も分かっていた。審神者なら誰しも通る道。

チュートリアルである。

今の練度ならあの時ほどむざむざとやられはしないが、練度1で人の身にも慣れていない段階では刀剣男士の本能にしたがって戦うしか出来なかった。

結果、重症を負い返り血を浴びてお世辞にも綺麗といえない姿を主に晒すことになる。

それからだ。主が目を合わせなくなったのは。

顕現した時は及び腰ながらもキラキラとやる気に輝いていた目をきっちりと合わせてくれた。

____きっといい審神者になるだろう。

確信し、期待し、それに答えたいと思ったことを覚えている。







「現代では刀どころか人を拳で傷つけることすらしたことの無い人間が多いと聞いた」

「で、血生臭い姿見せて嫌われた、と」

スパッと言いたいことをまとめてみせると彼はうめき声をあげて布を引き下げた。

目が合わないのは君が下を向くせいもあると思うぜ。というか自分だけが怖がられていて私が怖がられていないと思うのは十中八九それが原因だろ。
言い方は悪いが事実と被害妄想が混ざっている。

顔上げてこうぜ!!


「んな!?なにをッ!?」


顎クイです。

鶴丸国永in私が山姥切国広を顎クイしています。
至近距離です。

やばいコレ第三者の視点で見たかった!
あと山姥切国広やっぱめちゃ綺麗。いや私も今は鶴丸だから儚い系美人なんだけど、それはそれとしてマジ綺麗。綺麗って言うなって方が無理よりの無理だろ語彙力が死ぬ

ンンッ違うそうじゃない。 

「君は少し思考も目線も下過ぎるな。よく考えてみろ。俺が最初に見た光景は主とその側に立つ君だ。君は嫌われているどころか頼られているんじゃないのか

実際、太刀を狙うのなら伊達繋がりで大倶利伽羅か、一期狙いで粟田口でも構わない。

それにたった今、主の命で単騎出陣に行ってきたんだぜ?もし血生臭い姿で嫌われたと、怖がらせたと思うならばなぜ主はそれを命じた?なぜ出迎えてくれた?もうそんなものは見たくないと思うのが普通じゃないかい?

「いいか、君が嫌われているとする理由は穴だらけだ。目線なら俺も合わんし距離だって君より明らかにとられている」

まるで寝耳に水!という表情をする山姥切。分かりやすいなこいつ

顎から手を退けてわしゃわしゃっと撫でる
抗議の声は無視だ無視
腕を掴んで立ち上がらせ、部屋を出た。

「どこに行くんだ」

「厨だ」

手伝いはいいかと思ったがこれは早急に解決すべきだと思う。

初期刀は主が最も頼りにするべき存在であり、信頼できる関係であるべきなのだ。



ズンズン廊下を進んで行く。

………ところで、

「厨ってこっちであっているかい?」


やめて、そんな呆れた目で見るな!




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