大和守安定は本丸で三振り目の打刀だ。

同日に加州も顕現しているがタッチの差で自分の方が早かったと大和守は主張する。

それはさておき、そんな彼の教育係として加州、乱と共に世話になっているのが本丸唯一の太刀 鶴丸国永。

戦術の面で知識は多岐に渡り、技術だって刀にだけ頼らず柔術を取り入れたりとその身全てを使うスタイルは沖田や近藤の天然理心流にどこか通ずる。

流派なんてものじゃない鶴丸のはもっと荒削りで荒々しい。でも洗練されていた。

本丸の全体をよく見て考えていて、練度が追いついても勝てない、と確信させる風格があった。

大和守は若い刀ゆえに古刀である彼のことはよく知らない。

でも彼は大和守とその元主、沖田総司を知っていてくれた。

今の主を持ちながら沖田くんを誇りに思う気持ちを尊重し、その象徴かのように纏うダンダラの羽織りを大切な繋がりだと言ってくれた。

それがどれだけ嬉しかったか、きっと彼は知らない。

茶化していたけど、加州だって茶化さずにはいられないくらいには嬉しかったはずだ。

頼もしくて、面白くて、優しくて、そんな鶴丸を大和守は慕っている。

だからこそ、今回の演練は絶対に勝たなければならない。

主の同期生だとかいう二人には負けるわけにはいかなかった。

別に友達ではないっぽいしいいよね。

とはいえまさか遠戦と白刃戦両方の命運を握る心理戦なんて大役を任せられるとは思わなかったから加州相手とはいえ実は緊張していた。

そのせいで色々と言いすぎた気もするが作戦が成功したのでいいだろう。

だけど_______


「鶴丸さんッ!!」

開戦の合図が鳴り作戦通りとはいえ、銃兵の攻撃を全てその身で受け、真っ白だった姿が赤く染まっていくのは血の気が引いた。

でも痛みに歪んだその金の瞳が、「行け!」と叫ぶから、

「清光ぅうう!!!」

「安定ぁああ!!」

真っ直ぐに向かってきた加州と切り結ぶ。

山姥切と堀川の機動重視班は鶴丸が遠戦を受けている間にスタートダッシュを決めて相手に先制攻撃を仕掛けていた。
それを追いながら薬研が銃兵で援護する。

練度的にあちらは任せて大丈夫だろう。

そして、

「悪いけど、お前と一対一でやる気ないんだよね!」

「油断大敵ー!」

まだまだ練度の低い大和守では初期刀の加州に勝てないのだから、同じような練度とはいえ短刀と組んで戦う。

けど、やっぱり強い。

「首落ちて死ね!」

攻撃が、通らない。くそっ金の盾兵が邪魔だ。

「オラオラオラッ!」

「オーラオラオラァ!」

こちらがダメージを負う打ち合いに焦る。
悔しい、むかつく、くそったれ!

この戦いに勝つのは次に繋げる作戦のために必須なのに!




_____いいか、大和守。冷静であれ。

_____相手が熱くなればなるほど釣られて熱くなってしまうが、そんな時こそ頭の中は冷静にな。

_____そして、熱くなってると見せかけてここぞという時に一気に引け。


手合わせで加州相手に連敗が続いた時鶴丸に言われた言葉が頭を過ぎる。

そうだったね、冷静に、…

乱の一撃が刀装を破壊した。
ここまで来るのにこちらはすでに中傷と重症目前。

畳みかけてくる加州の重い一撃を___受けずに流した。
今まですべて全力で受けられていたからかバランスを崩す。

「な!?」

「沖田譲りの、冴えた一撃!」


戦線崩壊には足りないけど確かな手応えが伝わる。

やっとまともに入った攻撃。高揚した、油断したつもりはなかった。

けど、

「俺の裸を見る奴は……死ぬぜ……!」

まずい、乱はまだ体勢を整え切れてない!

すぐに間に入ろうと踵を返し、それより数瞬速く目の前をひらりと白がひるがえった。


「紅白に染まった俺を見たんだ……後は死んでもめでたいだろう…!」




『勝利A』


「あーっ良いとこ持ってかれた!」

「はっはは!驚いた、ゴフッ」

「吐血ーーー!?」

てっきり遠戦をもろに受けて戦線崩壊かと思いきや、ここぞというところで決めてくる。

乱への攻撃体勢に入っていた加州が避けられるはずもなく、強襲されるがままに戦線崩壊させられた。

そんななのに思いっきり笑って血を吐くなんてアホなことして、

あーあ、ホント敵わないなぁ。いろんな意味で!

でも吐血はトラウマに響くからやめてほしい。

自身の手で仕留めきれなかった悔しさとで複雑な心境になりながらも、そんな彼だから結局最後は笑えてしまうのだ。

あーもう!なんて白い着物を赤く染めた鶴丸を甲斐甲斐しく介抱しながらだれも戦線崩壊しなかった仲間たちと合流して、

この勝利を主に捧げに転送された。

勝ったよ、主!
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