元旦。

審神者たちのその日の過ごし方は実に様々だ。

正月なのだからと本丸の活動を休止し、優雅に正月を過ごす本丸。
一年の景気付けに一戦!と戦場に繰り出す本丸。
ただの一月一日だといつもと変わらぬ日常を過ごす本丸。
年末に終わらなかった仕事に追われる本丸。

だが、一番は万屋街にある神社へ初詣に行く本丸だろう。この日は現世と同じで店も賑わっており、それ目当ての本丸も多い。

かく言う稲葉本丸もそんな数多のうちの一つであり、第n回、チキチキ!主とお出かけするのは誰だ選手権で見事勝利を掴んだ今剣はいつもの倍以上は賑わう万屋街大通りの喧騒を主と手を繋いで歩いていた。

あちこちから聞こえる客引きの声やセールの呼びかけ。カランカランと鳴るベルの音はなにか懸賞でも当たったのだろう。ワッと嬉しそうな声が上がる。

そんな賑やかな声に釣られてしまいそうになるのをぐっと堪えて、今剣は地図と睨めっこする主と共に一番最初の目的地を目指した。

メイン通りを一つ横に逸れ、飲食店の立ち並ぶエリアに足を踏み入れる。
お昼時の時間を避けたこともあって正月といえども多少人混みはまばらだった。

そんな通りの奥の奥。

やや築年数は感じられるものの、リフォームされているのか古めかしさの薄い一軒家があった。

ガラリと引き戸が開かれて出てきたのは1組の審神者と刀剣男士で、満足そうにお腹をさすりながら「ご馳走様」と中へ声をかけている彼らと入れ違うように敷居を跨ぐと、厨房服を着た男が振り返る。

「らっしゃい!……って、なんだお前か」

「お前じゃないでしょ、お兄ちゃん」

主が、たった三年ほどでは見せることのなかった顔で嬉しそうに笑った。





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