まあそんな頃の名残で宝石や鉱石にはわりと詳しいのだが……我ながら私はどこを目指しているんだろう。
そういえばあの頃一等気に入っていた宝石があったはずなんだけど、あれはどこにやったんだったか。

そんな昔の記憶に思いを馳せていると、カランカランとドアベルが鳴った。

知り合いや友人から来訪の知らせは受けていない。
となれば一般客か。
closedの看板に気付かなかったんだろうか?

「すみません、今日はもう営業は終了して____ 」

そうして来客を迎えるとそこには、美しい銀の星。

静かな深い海のような、
きらめく夜空のような、

青い、そうまさしく先程思い馳せた宝石、瑠璃のような瞳が瞬いた。

すっと引かれた口角が弓を描き、小首を傾げた拍子にさらりと陶器のごとく滑らかな頬を銀糸が撫でる。


「こんばんは」

「っええ、こんばんは」

一つ一つの細やかな動作さえ見入ってしまっていた私の意識が引き戻されて来る。

「すみません、営業は終了してますので」

「ああ分かっている。すまないね」

「はあ……?」

訝しげな私を置いて、銀の彼は足を進めた。おいおいえええ?
接客スキルが試されてるのか?と相手の意図が読めずに困っていると彼はカウンターを挟んで私と向かい合う。
なんなんですか?そんなまじまじと見て。

「あのー?」

「ああそうだね、先に名乗っておこう」

いや結構です黙って帰れ、とも言えずにいると彼はすっと息を吸って不敵な笑みを浮かべる。

研ぎ澄まされた刃のような、
苛烈に燃ゆる炎のような、
狙いを定めた獣のような、

挑戦的な目をしていた。

「俺は政府万屋管理部臨時職員 山姥切長義。此度は万屋街内の施設管理及び従業員の正規雇用のため万屋街を回っている。この店は管理部に営業届けを提出していないな?」


神は私を見放した!!!
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