03

薄暗い廊下に無機質なベルの音が響き渡った。
格式ある家屋のように広いその邸には、広さとは裏腹に人の気配がしない。
鳴り続けるベルは廊下に落ちている影をじわりと広げるような、なんとも言い難い不気味さを持っている気がした。
やがて邸の奥から現れた年の割に強い眼光を持った初老の男が受話器を取る。
フツリと途切れたベルの音。

「はい、こちら的場一門……ええ、……はい」

男は途中首と肩の間に受話器を挟み込み、電話の横にあったメモ用紙にペンを走らせた。
最後に「伝えておきます」と言って受話器を置くと、書いたメモを束から千切ってまた邸の奥へと静かに消え……廊下には静けさが戻る。


的場一門当主が変わったばかりの、ある日のこと。

悪意の産んだ悲劇が今、産声を上げた。

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