1.開戦(2)




「鬼兵隊、俺に続け!!」

それぞれが高らかに鬨の声を上げる中、鬼兵隊の総大将を務める高杉は、先陣を切って荒野へ進み出る。

すぐに、牛頭とでも言うべきか、異形の者---天人と呼ばれる---が眼前に立ち塞がった。

彼らは人語を解するようだが、言葉を交わす必要など無い。

高杉は、一瞬で牛頭まがいの天人の懐に踏み込むと、上半身と下半身を真っ二つに斬り裂いた。

血飛沫が飛び散る 。


あぁ、こいつらの血も赤いのか---。


そう思う刹那の間にも、全方向から次々と天人が襲い来る。

高杉は身を翻し、鮮やかに、確実に、天人達の胴を斬り捌いて行った。



斬って、斬って、斬って----。





「---オイオイ、キリねーな、コイツら。」

トン、と背中に触れる見知った温もり。

銀時だ。

「もう息切れたァ様ねーな、銀時ィ。」

前方の敵に刃は向けたまま、背後に話し掛ける。

「はァ!?何言ってくれちゃってンの、この人!おめーがヘバってねーか見に来てやったんだろーが。」

「ヘバってんのはてめェだろ。」

「いや、おめーだ。」

「てめェだ。」

「おめーだ。」




「余裕だね、二人とも。」


高杉と対峙していた天人の胴から刀が突き出し、それが抜かれると同時に血飛沫が上がり、その巨体が崩れ落ちた。

そこに現れたのは。


「さくら、」


さながら戦乙女とでも形容すべきか、整った顔と色素の薄い黒髪を僅かに赤く染め、微笑を湛えて立っていた。

「元気有り余ってるなら、加勢は必要ないよね?」

呆れたような笑みを貼りつけて、わざとらしく小首を傾げて来る。

「そっちは片付いたのか?」

高杉が一歩進み出た。

「大方ね。大将みたいな奴の首は取ったから、総崩れ。あとは私の隊だけで押し返せる。」

「そうか。」

「さっすがさくらチャン!高杉と隊長交代したら〜?」

横から茶々を入れて来る銀時を、高杉はギロリと睨んだ。

「てめェも斬るぞ。」

「冗談に決まってんだろが!本気で刀向けんな!」

フン、と息を吐いて、高杉はさくらに向き直った。

「俺の隊は。」

「陣形維持しつつ待機して応戦中。指示を。」

「そのまま二時方向へ迂回させろ。挟み撃ちにして叩く。」

「了解。」


迅速かつ的確な行動と、指示。

高杉とさくらのやりとりを聴きながら、流石、統率の取れた部隊は違う、と銀時は感心する。

いつもは気のおけない仲間として戯れているこの2人も、鬼兵隊の隊長と副隊長として言葉を交わす時はどこか厳然とした雰囲気を漂わせる。

「それでは隊長、途中までご一緒しても?」

「あァ。」

恭しく訊ねるさくらに、高杉が頷くと、彼女は嬉しそうに微笑んだ。

「晋助と近くで戦うのなかなかできないからさ。」


「行くぜ。銀時、さくら。」
高杉が身を翻す。

「ヘイヘイ。つか、指揮んな。」

銀時とさくらはその後に続いた。

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