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「あ、そちらの方は…。あの有名な鬼の副長土方さんですね!」
「あぁ?なんだ?オメーさんは。」
てめぇこそなんだその態度は、土方コノヤロー。
この娘がいなけりゃ、とっくに頭ブチ抜いてやってるんですがねィ。
どうも、この娘の前でそんな俺の姿は見せたくないんでさァ。
「は、初めまして副長さん。私、そこの花屋で働いている者です。」
いや、アンタもこんなニコチンに丁寧に挨拶なんてしなくていいから。
「総悟くんて、とても素敵な男の子ですよね。優しくて、こんな綺麗な顔をして、お花が好きだなんて、まるでどこかの国の王子様みたい。」
彼女はふふっ、と肩をすくめて笑う。
今時その発言は痛すぎるが、彼女が言うと愛らしいとさえ思えちまう。
確かに俺ァ、サディスティック星のサド王子なんて言われちまってますがねィ。
この娘を鎖で繋ぐとしても、それをしたいのは躯じゃなく、心でさァ。
俺だけ見て、俺だけに笑いかけて、俺だけを好きだと言って欲しい。
欲を言えば、夜に限っては、躯と言葉で責めて虐めて、仔犬みてぇにキャンキャン鳴かせてみたいってのもありますがねィ。
そんな事すれば、自分が大事に育てた花を手折っちまうような罪悪感に苛まれそうだ。
彼女の方こそ花のようでさァ。
可憐で、純粋で。
たおやかでつつましやかで女らしくて。
「…総悟お前、この手の女に本当弱ぇよな。」
俺にだけ聞こえる声で、土方さんがぽつりと言ってくる。
「…どういう意味ですかィ。」
「別に。ただ、思っただけだ。」
茶化してるわけでも無ェ、少し遠い瞳をして、俺と視線を交わせる事もせず、独りごちるように言う。
…そういう面が気に入らねェ。
俺の事を分かっているとでも言うような、その面が。
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