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【9.忠告】
---まぁ、なんとなく予感的なモンはあった。
以前よりも登校するようになってきてくれた事は、単純に喜ばしい事だと思った。
学年こそ違うが、ウチのクラスのガキ共は何の計らいもなくさくらを輪の中に引き込もうとするし、さくらもだんだんに打ち解けて来ていると思う。
以前よりも自然に笑うようになったし、このまま彼女が自分の足で歩けるようになってくれりゃ、それにこしたことはない。
ただ、さくらを徐々に変えているモノは何なのかと、ふと思った事がある。
そして、同時に、そういやあのひねくれ者も雰囲気が変わったな、なんてそんな気がしていたのを思い出す。
修学旅行2日目の夜。
あの高杉が、俺に『頼む』という言葉を発し。
あの高杉が、血相変えてホテルを飛び出して。
そうして、修学旅行に参加しているはずのないさくらを連れて戻って来たのを見て、俺は、あぁそうかと全てに合点が行った。
だが、同時に、一抹の不安が胸を過ったんだ。
高杉よォ。
何やかんや言いながらも、俺たちはずっと共に歩いて来た。
俺はずっとお前を見て来た。
だから、敢えて忠告する。
否定するわけじゃねぇ。
お前が、もう自分の足でその道を進んでいると信じているから、だから、敢えて問うんだ。
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