計画的犯行施策 2
昼休み。
2Zまで迎えに来てくれた土方くんと沖田くんと共に、屋上で昼食を取る。
最近のあたしは、意外と真面目に登校して来ている。
授業は出たり出なかったりだが、欠席の回数が減っただけでもすごい事だ、と銀八先生は笑ってくれた。
あたしがこうして学校に来れるようになったのは、3Zの皆の存在も大きい。
同情や慰めでは決して無く、ただ友達として気さくに接してくれる彼等が学校に居てくれるという思いが、今までは玄関まで行くのも億劫だったあたしの背中を押してくれる。
「さくらはもらうんだったらどっちがいいんでィ?食べ物か、小物的なモンか。」
「え?」
土方くんからわけてもらった焼きそばパンを食べていると、不意に沖田くんから訊ねられた。
「なんで?」
首を傾げると、同じ焼きそばパンにこぼれんばかりにマヨネーズをかけながら、土方くんが横目にあたしを見た。
「修学旅行の土産。」
「あぁ!」
あたしはポンと手を打った。
そういえば、3年生は明日から修学旅行だ。
あたしも留年してなければ皆と一緒に行けたはずだ。
「確か、京都だっけ?」
「そ。修学旅行つったら海外に決まってるってのに、国内だぜ?もー少し気が利いた所にしろってんだ、土方コノヤロー。」
「なんで俺のせい!?」
「いや、何となく。
で、さくらは何もらったら嬉しいんでィ。」
フェンスに寄っ掛かりながら沖田くんが、さも自然に訊ねて来る。
それって、当たり前のことなのだろうか?
お土産を買っ来てくれるとか、何をもらったら嬉しいかとか、そんなことされた事も訊かれた事もない。
それだけに、あたしにとってはそれらはとても嬉しくありがたい事に思えた。
あたしが明確な答えを発しない為、沖田くんが「ほらほら言っちまえ」なんて急かして来る。
「や、そう言われても。ほんとにあたしは買って来てくれようとしてる気持ちだけでも充分嬉しいよ。」
「そいつァ遠回しな迷惑ですアピールかィ?」
「ちがうちがう!
…ほら、あたしあんまり友達いなかったから、さ。だから、ほんとに何でもいいし、気持ちだけでもありがたいっていうか。」
少し自虐的に言って笑うあたしを見て、沖田くんは一瞬瞳を伏せた後、呆れたようにふーっと息を吐いた。
「どーすんでィ、んなこと言ってチャイナに京都限定酢昆布とか買って来られたら。」
からかうような瞳であたしを見る。
「それだってありがたく食べるけど。」
真顔で答えるあたしに、沖田くんと土方くんは苦笑いを漏らした。
「欲ねーのかよ。」
「猫かぶってると、そのうちボロが出るぜィ。」
沖田くんが、あたしのおでこを指で弾く。
「猫かぶってないし!」
「ヘイヘイ。」
沖田くんはやれやれと言うふうに頭を振って、立ち上がった。
「じゃ、おまかせでいーんだねィ。」
「うん。」
「さくらも行けたらよかったのにな。」
続いて土方くんも、あたしの頭にポンと手を置いて立ち上がる。
「さ、もーすぐ予鈴だ。俺ら教室戻るぜ?」
「…あ、あたしはもう少しだけ、ここにいる…。」
一緒に戻ろうかと向けられた視線から咄嗟に目を背け、うつむきがちに答えた。
次は保体の授業だった。
どうせ体を激しく動かすことはできないし、見学に行ったところで親しくもないクラスメイトを眺めるだけだ。
「…そうか、じゃあまたな。」
少しだけ悲しそうな顔して、2人は屋上を跡にした。
キンコーン…
ややして予鈴が鳴る。
あぁ、どうしようかな。
今教室に戻っても、校庭まで移動するために皆でワイワイやっているだろうし。
タバコでも…とポケットに手を入れて、首を振った。
いけない、いけない。
高杉先生との禁煙の約束があった。
暇だ。
(…保健室に寝に行こうかな。)
そう思って立ち上がると、
「おい、そこの不良生徒。」
背後から声がした。
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