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「…あ!もしもし!名前さん」
『はぁい』
「え、っとその。」

夕方からの今晩。
いつもの時間、いつもと同じようにケータイを操作して電話をかけ、いつもと同じ声で名前さんが答えてくれる。
“お返事は春高で”そう聞いて期待と不安とが入り混じるもののまだこの関係を続けていていい。春高まではこの関係は続くのだという安堵感。
その場で振られたりなどしたらそれこそ今日はベッドに潜り込んで朝を迎えただろう。

『あ、そうだ。まえにさ、進学云々で聞いたでしょ、治くん』
「あぁ、しましたね」
『わたしね、大阪の方の調理学校進むんだ〜』
「え?」
『またご飯行けるね』

こないだ言い損ねちゃって。と会話を続ける名前さんの声はすでに右から左へと流れていて、なぜ大阪なのか。都内でもきっとあるだろうに。たまたまなんだろうがその報告を今して、ご飯に行けるねと伝えてくれることについついいい返事を期待してしまうし、今後、もしかしたら一緒にいてくれるのかもしれない。という期待が膨らんでしまう。

『またこんどご飯連れて行ってね』
「!まかせてください!美味いとこいきましょう」

春高もちかい冬の日。俺の心は不安と期待で胸がいっぱいだ


───

「治あれから意外とるんるんだね」
「そら、毎日連絡しとるし返事はいい返事やろ。誰が見てもわかるわ」
「あぁ、やっぱり?流石に気付いてたけど本人はまだわからん。って眉間に皺寄せてたよ。」
「わからんわけないやろ」

少し離れたところで角名と侑が自身の話をしているのが聞こえる。
わからんやろ。もしかしたら純粋にお友達を続けたいからやからとかあるかも知れない。
二人の声が耳に入るギリギリ程度の距離のコートの白線外でサーブを構える。
予選は調子を崩して出れなかったが本戦に向けてだいぶ調子も良くなってきた。

コートの内側に決まるボールの弾む音が体育館に響き自身も調子が戻ってることを実感する。

「おー、やっと戻ってきとるわ。あのポンコツ」
「お前には言われたないわクソツム」

いつのまにか近づいてきた侑の声にそのまま反応しもう一度ボールを投げる。
これならば春高は心配なく出場できるだろう。

「次こそ勝つわ」
「優勝以外は全員敗者や。」
「知っとる」

たとえ、梟谷と試合であたろうと勝利という2文字以外に興味はない。

前のことはもう消化した。

ダァンと大きな音を上げてボールを打ち込む。
告白も、試合も全部勝って幸せな年明けを迎えたいと思いながらあと1週間で来る春高に夢を抱いた。

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