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「う〜ん。それには事前準備と綿密な打ち合わせが必要だな。」
「よし!そうと決まれば今から作戦会議だ!!」
「え?ちょ、ちょっと!・・・まだ掃除が!」
双子は二人だけで興奮気味に話を進め、パロマの返事も聞かず、強引に出口まで彼女の背中を押した。そして、パロマは目当ての書類を掴む事も出来ずに、部屋から出る羽目になった。




次にやってきた夜の時間帯。
仕事の疲れでベッドに潜り込んでいる時間帯だというのに、パロマは薄暗い部屋の中で1人佇んでいた。
小さいが綺麗に整理されているパロマの部屋は、机の上にはペン置きさえ見当たらず、ベッドは使われた形跡さえなく、今晩は綺麗と言うには片づけられ過ぎていた。
そして彼女が身につけているのは着馴れた寝衣ではなく、仕事着でもなく・・・・この世界にやって来た時に身に着けていた、学校の制服だった。


―――こんな物、使う時が来るなんて・・・。


パロマはベッドの隙間に挟んであった幼稚なチェックのポケットを取り出した。
それは以前、ナイトメアから貰った秘密のアイテムだった。中を探って透明マントを取り出す。意を決してそれをしっかりと頭から被り、透明になったのを姿見で確認してからそっと部屋から忍び出た。
誰もいない筈の長い廊下に、ヒタヒタと小さな足音が木霊する。
人の手薄になっている隙に忍んでいるつもりだが、それでも激しい鼓動で心臓は張り裂けそうだ。
パロマは突き当たった先の階段をそっと覗いて誰もいない事を確認してから、素早く二階に上がる。
上がった先をまた曲がって長い廊下の隅をゆっくりと、慎重に、音を立てずに歩く。いつもはすぐ辿り着く場所も果てしなく遠くに感じた。そしてやっと目的の場所まで到達すると、そっとドアノブを回す。中は明かりが付いておらず、月明りだけで薄暗い。しかしいつも掃除をしているパロマには、部屋の間取りが手に取る様にわかっていた。
本がぎっしり詰まっている書棚、緻密な刺繍が全面に施された絨毯、そしてベロアのソファ。暖色系の色で統一された居心地を最優先に考えられた部屋―――
そう、ここはブラッドの書斎兼仕事部屋だ。


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bkm


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