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言葉とは裏腹に、優しい手つきで足首からそっと撫でられる。ビクッと反射的に足を引き寄せようとするが、片手で捕まれたまま全く微動だにしない。
「・・・っ」
パロマは真っ赤になって俯いた。心臓が大きく波打つ。
「折れてはいないようだな。腫れが酷いから一度医師に見せるか。他に痛みは?」
「腕に傷が・・・あっ!でも掠り傷ですからっ!!」
今度は両腕を取られ付いた泥を払ってから撫でられる。傷にブラッドの指が触れるとチクッと甘い痛みが走った。


(―――貴方のせいで、胸も辛く痛いです・・・なんて言ったらどうなるんだろう。)


ブラッドは一通り調べて満足したのか、ようやく解放されたパロマは、暗い森の中がチラチラと明るい光が微かに揺れているのに気が付いた。穴の中では分からなかったが、耳を澄ませば、静かな場所だった筈が何だか騒々しい。
「ここの森は無駄に広く、慣れた者でも迷いやすい。お前の同僚達が心配してお前のことを捜索しているんだ。」
ブラッドはポケットから褐色の筒状の物体を取り出し、少しひらけた場所まで出るとそれを地面に突き立て、伸び出た紐に松明を近付け火を移す。ジュッと紐が燃えだし筒に当たると、素早い音を立てて赤い火の球が次々と光の尾を引きながら空に舞い上がる。頭上高くで赤い火の玉が大きな音と共に破裂し、小さな粒子になって閃いた。
「今打ち上げたのは合図用の花火だ。これでお前が見つかったのが他の者にも伝わるだろう。―――さぁ、帰るぞ。」
松明をパロマに握らせて、横から腕を回して抱き上げる。


―――ま、またですか!!


ブラッドはパロマをしっかりと抱きかかえて、彼女には方向も分からぬ所を迷いもなく歩き出した。



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bkm


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