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―――その一方、パロマは・・・


「はぁあぁぁ〜・・・誰も助けに・・・来てくれない・・・。」
『落とし穴』の中で、激しく落ち込んでいた。


足の痛みが酷くなり、立つ事さえもままならない。
依然落っこちたままの状態で、10時間帯を過ごしてしまった。念頭には誰かが助けにくるだろうと軽く期待があったのだが、ものの見事に裏切られてしまった。
「はっ。そう言えばわたくし、奴隷でございました。」
今更ながらに自分の状況に気付く。
秀逸な数多の部下を率いる帽子屋敷。吹いたら飛ぶような、取るに足らない奴隷1人を探す、律儀な主人がどこにいる。
「・・・・あ〜あ」
パロマは薄汚れた顔を真上に上げた。小さい穴から見える夜空は、星が瞬き優しい光を返してくれる。
(・・・ボス、ちょっと笑ってたよね・・・。)
パロマは、ここに落ちる前の出来事を思い出していた。
自信満々に話す自分に、ブラッドが微かに微笑んだ気がしたのだ。あれは、いつも見せているどこか作りものめいた笑みではなく・・・緩んだ隙にちょっと出てしまったような・・・


―――お前は囚人から奴隷に格上げだ。


頭の中のブラッドが優しさの欠片も感じない冷酷無惨な微笑みのブラッドに変わる。
ついでに恐怖のエリオットと忌々しい双子も思い出す。
(やっぱり・・・私は、使い捨ての奴隷だって事・・・?)


パロマは両膝を抱え込み、そこに頭を深く沈ませる。回りの暗さも加担して、どんどん暗い気持ちに陥っていく。狭い穴の中は、10時間帯で積もった枯葉で覆い尽くされていた。そのまま自分もその一部となって、朽ちてなくなるのだろうか・・・。
 

「―――飛べない小鳥が、こんなところで休息中か?」


パロマはハッと膝から顔出し、頭上を見上げた。
暗闇の中で、松明の火にターコイズの瞳が妖しく光る。


「私の元へ戻ってくるなら、―――助けてやろう。」


「ボ、ボスぅ―――!!」


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bkm


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