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「それはこっちの台詞だ!このっくそガキ共!!仕事さぼりまくって、何処ほっつき歩いていやがった!」
彼らが守るのは、闇の世界を牛耳る荘厳にして恐怖の館、『帽子屋の正面玄関』だ。数多の刺客が送り込まれてくる、危険な場所でもある。しかしどういう訳か、ここのところ門の警備がいつでもガラ空きだった。エリオットが怒りを撒き散らしながら二人を探し歩く姿は、使用人達に何度も確認されている。
「お前に教える筋合いはない。」
「それよりパロマは〜?」
目上の者に対する礼儀も、上司への敬意も全く持ち合わせていない双子が、キョロキョロしながら部屋の中に入ってくる。
奴隷女の狭い部屋に、屋敷の役持ち全員が集合するという、前代見門な出来事が起きた。ブラッドが痛い頭を抱えて、一度部屋の外へ全員を引きずり出す。
「ここの奴隷は10時間帯程消息不明だ。何か手掛かりがないかここまで来たのだが。時間の無駄だったようだ。」
ブラッドのマシンガンが瞬く間にステッキに姿を替える。双子が驚いてお互いを見合う。
「えぇ?悪い物でも食べ過ぎて、トイレでゲロってんじゃないの?」
「あいつ、食に飢えているからな〜。」
「あほか!10時間帯もゲロってねーだろ。」
お前が突っ込むな、とブラッドはエリオットを冷たくねめつける。4人の不穏な雰囲気に、偶然この廊下を通りかかった使用人達が恐れをなして、みな遠巻きにしながら一目散と逃げていく。
「―――なんだ。いないのかぁ。せっかく頑張って仕込んだのにね、兄弟。」
「う〜ん。楽しみは取っておいてもいいんだけど、時間が過ぎて元に戻っちゃったらそれこそただ働きだよ、兄弟。」
仕事をサボっていた事はさらっと流し、双子は心底がっかりした風で話し合っている。
「お前等、一体何の話だ?」
「ふっふっふ。バカウサギには考えられない位、考えられた罠を仕掛けたんだよ。」
「僕たちはその罠を『落とし穴』と名付けたのさ。そこでパロマを森まで誘いこんで、落ちた所を笑ってやろうって魂胆。」
勿体ぶって話す割に、作戦名はそのままダイレクトだ。斧に替わって手のひらサイズのシャベルを片手に、仲良く森で穴掘り・・・。なりは子供で大人顔負けの思考回路だが、やる事はかなり幼稚だ。
「落とし穴って、てめぇ等はお山の大将か!そんなん誰もひっかからねぇよ。」
「うるさいアホ。そこら辺のど素人の出来損ないと比べるな。落とし穴とは絶対分からせない細工を施してある。」
「バカなパロマは100%落ちるね。あっ、ここにも落ちそうなバカがいた。」

ばーかばーか、てめぇ等の方がバカだ、と不毛な言い争いが続く。それを物の見事に無視したブラッドは1人、思案気に双子を見下ろした。


―――『森』と『落とし穴』・・・そして『舞い上がった書類』


「おい、その『落とし穴』はどこに仕込んだ。」
「どこって・・・場所は指定できないよ、ねぇ兄弟。」
「そうだよ、どこで引っ掛かるか分からないから無数に仕掛けたんだ―――森中にね。」



いつもは静寂に包まれている森の中、バサバサと蝙蝠達がいつになく飛び交い、夜行性動物がなりを潜めている。あちこちで松明が揺れザッザッザと草をかき分ける音が聞こえる。森の中は松明の明かりでちょっとしたお祭りの様に煌びやかだ。


「パロマーー!」「どこだ〜!!」


そう、帽子屋総出で森探索が始まったのだった。



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