12
ゼェゼェ言いながら、今度は大きめのバケツとモップを抱えて長い廊下を走る。この屋敷には部屋付きのバスが完備されているのだが、(もちろんパロマの部屋にはない)それとは別に上役達専用の大浴場がある。広さはもちろんの事、蒸し風呂やマッサージ用の簡易ベッドまで設置してあり、南国風な樹木が飾られ香油の香りが優しく広がる癒しの空間だ。パロマはかさ張る荷物を抱えなおして、精緻な作りの純白なドアを開けた。
入るとまずは、毛足の長い絨毯が引きつめられた休息所がある。華奢な作りの卓には、湯上り用の水差しと瑞々しい果物が乗っている。壁は金縁で飾られた鏡が等間隔に飾られ、みすぼらしい格好のパロマを映し出している。
「はぁ・・」と自分の姿を一瞥してから、奥にある大きな曇りガラスの扉に手を掛ける。
扉を開けると、中から湯けむりがモワッと溢れ出てきて、視界が真っ白になった。誰かが使ったすぐ後だったのか、中は蒸気でむせ返りそうだ。
「??」
湯気の向こうに、微かに影が見える。
パロマは見えづらい視界の中を慎重に歩き、手をかざして目を凝らすと、
「は?てめぇ何しにきたんだ。」
白い湯けむりの先に、湯船に浸かったエリオットとブラッドが見えた。そこは誰かが使った後ではなく、現在進行形で使われている最中だったのだ。
「えっ・・・・えぇ・・えええ!?」
真っ赤になったパロマは、すぐさまドア傍まで後ずさった。
二人だと確認した後は、どこを見たらいいのか目線が定まらない。
「しっししし、失礼しました。いらっしゃったんですねっ本当にごめんなさい!!」
何だか似たような台詞を前にも言った気がする。パロマは間の悪い自分が、心底嫌になった。
頭を抱えつつドアから出ようとすると、何故か今回も止めが入った。
「いや、せっかく来たんだから、背中流してくれよ。」
パロマは見ていないが、エリオットがニヤニヤしながら頼んできた。
頼んだと言っても、パロマにとっては上司命令だ。背筋をビクッと震わせ立ち止まる。
「・・・・えぇ〜・・・?」
半泣きになりつつ振り返る。パロマがドアを開けたせいで湯気が少なくなり、二人の輪郭がはっきり見えだした。普通にしていても色男の二人に、お湯が滴り色気が匂い立つ様だ。はっきり言ってこんな場所には、一秒だっていたくない。
異性の裸なんて、弟のでさえ見たことがない。命令も無視して、今にも逃げ出したいパロマだった。


prev next

34(348)

bkm


top

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -