04
「くぉら!!てっめぇ、また仕事さぼって双子と遊んでいやがったな。しかもシーツまで目茶目茶にしやがって。端切れにして風に飛ばされちまったら、元戻んねぇじゃねぇかよ!!」
パロマの目の前で、ウサギの耳がカンカンに怒っている。切れ端を拾い集めて縫い合わせた方が、良かったのだろうか。
「破いてダメにしたシーツ代は借金に上乗せしてやるからな。ホントに金返す気あんのか?!だからお前は―――」
その夜の時間帯、パロマは洗濯部屋で仕事から帰ってきたばかりであろうエリオットに、ガミガミ叱られ、それに正座で耐えていた。
固いタイルの冷たさが、足に絶えず突き刺さる。
双子に騙された後のエリオットからのお説教は、日常茶飯事になってしまったパロマだった。悪戯に耐え、お叱りに耐え、パロマにとっては過酷な二重苦だ。
パロマは理不尽さに腹が立った。
そして舌を出した悪ガキ達が目に浮かぶ。
(だって、私がシーツを破いたんじゃない。しかも遊んでなんかいないのに!)
と、心の中で反撃しつつも、上司であるエリオットには、頭が上がらない。
彼女はショボンと首を垂れる。
きっとウサギ耳があったのなら、ペッタンと下に下がりきっていたであろう。


そう、このお兄さんのお耳は、本物だという事も分かった。


リアルにウサギさんだった。
可愛いから付け耳をしている、一風変わった奇人では決してない。
(耳があるって事は、丸い尻尾もあるのかな・・・。なんて聞いても、絶対教えてくれなさそうだわ。・・・でも、気になる〜)
「―――聞いてんのか!ちゃんと仕事しねぇと、牢屋に逆戻りだからな!!」
エリオットは眉間に青筋をたてながら、まだ怒っている。
牢屋に舞い戻る事だけは勘弁、とパロマは姿勢をピンと正した。
「はい、ボス。すみませんでした。」
パロマは一応しおらしく謝る。
確かに、任された分の仕事が出来ていないのだ。
エリオットが怒るのも、当然だった。
「まぁ、お前も出来ねぇなりにも、頑張っているとは思うけどな。努力が全く実になってねぇけど。」
エリオットはため息を付きつつ、フォローを入れてくれる。
(・・・・あれ?いつもは叱って終わりなのに・・・?)
パロマは不思議に思っていると、エリオットは腕組みをして、真面目に答えてくれた。
「あのクソガキ共はいつだって仕事をさぼってんだから、テメェはいいカモなんだよ。適当に誤魔化すのを覚えねぇと、いつまでたってもオモチャにされるぞ。」
叱ってばかりだったエリオットの、珍しくも優しい言葉が、パロマの胸にジィンと響いた。
「あ、ありがとうございます、ボス!私、借金返済に向けて日々精進します!!」
「そのボスってのも、何だかお前に言われるとムカムカすんだよな。大体ボスはブラッドの事だし、俺の事はエリオットで良いよ。」
「はい!エリオットさん、これからも宜しくお願いします。」
パロマは、初めてエリオットの前で笑った。
「まぁ、頑張れ。本当に空回りなんだよなぁ、お前の努力・・・。」
顔だけは無駄に良いのになぁ・・・とエリオットは、ブツブツ呟きながら、その場から出て行った。


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