01
1人の少女がうずくまって泣いている。


ポロポロポロポロ長いまつ毛を濡らしながら、その瞳から大粒の涙が止め処なく流れ落ちていた。
艶やかなブルネットの髪が、顔に掛ってその表情を隠している。しかしその濃い髪の色とコントラストに、きめ細かな肌は透き通る程白く澄んでいた。
サラサラとした光沢のあるドレスに身を包んだ彼女は、何よりも異色な、
大きな天使の羽を背中に生やしていた。


―――どうした?何故泣いている。


声を掛けられてハッと見上げる少女。顔を上げた瞬間に大きな瞳からまた一つ大粒の涙が零れた。
「翼が、翼が思う様に動かないんです。何度やっても飛び立てないの・・・。」
そう言って、彼女は背中の羽を広げて見せた。真っ白で柔らかそうな羽が音もなく空を舞う。
それは彼女の背丈を優に超し、そして光輝く神聖なものだった。


―――もう一度羽ばたかせたら、そうしたら上手く出来るかもしれない。


しかし、可憐な少女はフルフルと首を左右に振るだけだった。
「もうダメかもしれません・・・・。私、飛べなくなっちゃったのかも。」
手を差し伸べて、頬をつたう涙を拭ってやる。すると、指が辿ったライン上からうっすらと頬が黒く染まった。


―――それならばここにいれば良い。私がそばにいてやるから、何も心配する事は無い。


少女はその声を聞いて、頬を触れていた手に自分の手を添えた。途端に白魚の様な指先からジワジワと黒く染まっていく。
「本当に?本当に一緒にいてくれますか?私の周りには誰もいなくて、ずっと心細くて。」
広い広い無空間。そこで彼女は孤独に小さくなっていた。たった一人声をかけてくれた人物に縋る様に近付く。泣くのを止めた瞳は大きな期待と裏切られる不安で揺れていた。


―――あぁ、お前が望むだけ共にいよう。飛び方もいつかは思い出すだろうから。


優しい言葉に彼女は心から微笑んだ。天使が堕ちた瞬間だった。
そっと抱き寄せると、「嬉しい。」と言って自分から顔をすり寄せてくる。彼女の美しかった腕が、首筋が見る見るうちに黒く染まってしまう。


そう、彼女は知らなかったのだ。


広げた羽根は彼女の見えない所で酷く毟り取られていて、痛々しくも骨が剥き出しになっている事を。


そして、それをした張本人が目の前にいる人物だという事も―――・・・











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bkm


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