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「パロマ。」
話しかけられて、パロマの肩がピクンと反応する。
「さっきは、冷たい言い方をしてしまって・・・ごめんなさい。」
アリスがパロマに向かって、しおらしく頭を下げた。
パロマが驚いて顔を上げる。
「あの時はみんなおかしくなっていたでしょ。私も、場に流されてどうかしていたんだわ。」
「い、いえっ!私こそどうかしていたんですっ!貴方が気にする必要は何一つありません!」
深く後悔しているアリスに、パロマはブンブンと頭を横に振って答えた。
アリスの第一声には、怒りが込められてはいなかった。
心の重しが途端に軽くなる。
「でもアリスに会えて嬉しかったのは本心ですから!ずっとずっと、会いたいって思っていたんです。」
「・・・ねぇ、パロマ。パロマが探しに来てくれたのは本当に嬉しいのよ?そこまで私の事を気にかけてくれる人間なんて、あの世界ではパロマ位だもの。」
(あの・・・・世界・・・?)
パロマに動揺が走る。
アリスは、『何か』を言おうとしている。
それは自分達が生まれ育った地を、帰るべき場所を『あの世界』と言ってしまえる、何かだ。
パロマは急いで話題を切り替えた。胸に湧いた不安を振り払う様に。
「あ、貴方がここで元気で暮らしているみたいで安心しました。アリスは時間の流れにすぐ慣れましたか?壊れた物が元通りに戻ってしまうなんて、ビックリですよね。私は全然慣れなくって、大変な思いを」
「パロマ。」
「・・・はい。」
諭すように名前を呼ばれて、パロマはそれ以上話せなくなった。
(やっぱり。)
アリスは誤魔化されてはくれない。
「少し、私の話をするわね。―――私、この世界に無理やり連れて来たペーターが、大っっ嫌いだったの。」
アリスの思いもよらない話の始まりに、パロマが目を丸くする。白いウサギ耳の彼とは、あんなに仲睦まじそうに寄り添っていたのに。
「だから敢えて滞在地は彼の居るハートの城を避けて、遊園地を選んだわ。」
アリスの頭の中で懐かしい旋律が溢れる。
それは陽気な遊園地で絶えず流れている、ワクワクと心が躍る音楽だった。


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bkm


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