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すべての者が入り口に視線を向ける。
そこにいたのは時計塔の領主、ユリウスだった。
何人かは、明らかに不快感を表に出して睨みつけている。
頭が崩れ落ちた甲冑像から未だにガラガラと破片が落ちてくるが、それ以外シンと静まり返っていた。変わり果てた審判の間をゆっくりと見渡して、ユリウスが静かに口を開く。
「役持ちとは思えぬ体たらく振り。全員がペナルティを課せられたとしても、何ら不思議ではないな。今が何の会期なのか誰も覚えてはいないのか。」
「ケッ!お高くとまったクソがっ!!」とエリオットが忌々しげに唾を吐き捨てた。
ユリウスは敵意が剥き出しの強い眼差し等気にも留めず、斜め横へと視線をずらす。
「ボリス=エレイ、ゴーランドがお前に用があるらしいが、身に覚えはないか。これ以上逃げ回っているのならお前の私物を木っ端微塵に破壊してやると、がなり立てながら探し回っていたぞ。」
「うぇっやっっばい!それを早く言えって!」
ボリスの耳がピィィンと立ち上がる。
余程身に覚えがあるのか、今までの争いが嘘だったかの様に、コロっと態度を変えて、
「アリス、じゃあまた後でな!」
と、ニコっとアリスにだけ挨拶をして、瞬時にその場から姿を消した。
誰もが動きを止めたその場で、ユリウスは身体の向きを教壇側へと変える。
「ビバルディ、お前はこの舞踏会の主催者だろう。もうすぐ開会式だと言うのに、こんな所で油を売っていて良いのか。エース、ペーター=ホワイトも自分の使命を全うしろ。このままだとハートの城の評価が地に落ちるぞ。」
ビバルディが悔しそうに顔を歪めるが何にも言い返さず、「おぬし達急がぬか!」と兵士二人をひっ立てる。それから入口付近に固まった兵士達に罵倒を飛ばしながら回廊へと向かって行った。
エースもカラッと表情を改め、剣を一振りし鞘に収めた。
「これからって時に、悪いタイミングでストップがかかるよなぁ〜。お前等も、ちゃあんと消毒して絆創膏張ってもらえよ?」
そう言って、右手でダムの左手でディーの頭をポンと叩いて二人の間を通り抜ける。
やっと立ち上がる程までは回復した双子は、エースの背中にむかってディーはべーっ!と舌を出して、ダムはイーっ!と歯をむき出しにして虚勢を張っていた。


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bkm


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