39
バァンっと音がして、今度はボリスの肩があった場所の後方にある壁に当たる。銃弾の威力に負けて、壁に亀裂が走った。やはりボリスに捕まれていたパロマだから分かったのだが、ボリスは瞬時に右にズレて銃の軌道から避けたのだ。野生の勘なのか、恐ろしい瞬発力だ。もしパロマがその場にいたら、亀裂が走ったのは壁では無く、間違いなく自分の左胸だ。
(なっななななん何なのこの人達っっ!!!!)
「やったな、この盗人下衆野郎!!」
ボリスが今にも銃に掛けた指に力を入れそうという時に、甲高い悲鳴が響いた。
恐れ戦いていたパロマだが、その声に瞬時に反応した。
ボリスもペーターも、ピタッと動きを止める。
「もうっ止めてよ!二人共止めて!!何で急に喧嘩しなきゃいけないの?!」
悲鳴を発したのは、ペーターの後ろから前にせり出したアリスだった。
「ペーターも急に銃なんか撃たないで!ボリスも貴方の事は分かっているから、心配しないで!!それからパロマ!!!」
自分の名を上げられて、途端に肩を震わすパロマ。アリスに怒られ馴れている筈のパロマだが、彼女の悲鳴も、ここまで切羽詰まった声も、耳にしたのは初めてだった。
「そもそもパロマがいけないんじゃない!私がいつ帰りたいって言ったのよ。心配しただなんて大きなお世話なの!誰も頼んでなんかないでしょ!!!」







――――え・・・・・・・








それを聞いて、パロマはすべての動きが止まってしまた。息をするのでさえ重苦し。
理解するのにひどく時間がかかる。
いや、理解したくないのだ。
自分の心音が嫌に頭に響く。今までよく動いていた口も重く閉ざす。まだ周りは言い争いが続いていたが、パロマの耳には全く入っては来なかった。



prev next

169(348)

bkm


top

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -