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アリスが両側とも肘鉄を喰らわすと、二人共左右それぞれに吹っ飛んだ。
ペーターは壁に激突して頭から星を飛ばし、パロマは先程以上にもんどりうって最後は審判の間をゴロゴロと転がった。まさかアリスからそんな仕打ちをされるとは夢にも思っていなかったパロマは、ダメージが大き過ぎて立ち上がれない。
「うぅっ、アリスぅ・・・感動の再会で・・それは無いでしょ・・・」
ガクッと項垂れシクシクと泣き出すパロマ。
つかさずアリスはパロマに駆け寄って、
「パロマ!!!あんた何でこの世界に来たの?!まさか私を探しにここまで来ちゃったの?」
と顔を歪めてパロマの身体を揺さぶる。


(・・・・あ、あれ・・・?)


ガクガクと揺すられながらもアリスの表情を伺う。
「どう言う事?!ちゃんと答えてパロマ!!」
アリスの顔は、ずっと想像していた『感動の再会』を喜ぶ表情ではなく・・・


―――何でこんなに・・・辛そうな顔をしているの・・・


眉を顰めるアリスを見ていられなくなって、パロマは自ら視線を外す。
「・・・最初は偶然迷い込んでしまったんです。」
パロマはボソボソと語り出す。逸らした視線の先に、自分の肩を掴んだアリスの手の甲が、力が入り過ぎて白くなっているのが見て取れた。
「異世界だと分かって、それから程なくして、貴方もこの世界に囚われていると分かってそしたら・・・そしたら、居ても立ってもいられなくなって・・・・」
言い訳じみた言葉が、自分にも空しく聞こえる。
こんな台詞を口にする為に、ここまで来たのではない。
元気でいたのか。
不自由な生活を余儀なくされてはいないだろうか。
理不尽な思いや、辛い思いはしてはいないのか。
帰りたいのに帰れないのではないのか。
こんな自分でも、助けになれる事は無いのか。
泣き暮れては、いないのだろうか・・・


言いたい事は一杯あった。
言って欲しい事だって、沢山。


あまり再会を喜んでくれてはいないアリス。
非常識な世界で、きっと辛い事も沢山あった筈だ。
だから、
きっと、
出会えたら、


目を潤ませ、


口は言葉を無くし、


まさかこんな所で同胞に会えるなんてと・・・・




(会いに来たのが私でも・・それでも良いって・・・・
ほんのちょっとでも良いから、笑顔が、


貴方の笑顔が見たかったのに―――)



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bkm


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