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「私、これでも女なんですけれど。女性に対して『匂う』『臭い』と仰るのは大変失礼なんじゃありませんか。」
「それはもちろん常識を持ったレディーに対してはそうですよ?でも貴方はどう見ても・・・フッ」
(どう見ても、何なのよっ!)
伏せ目がちにクスクスと笑う青年に対して、パロマの怒りのバロメーターが急激に上昇してきた。
「そもそも、僕は『不衛生』だと言ったのです。・・・・そんなに『臭い』のですか?」
「なっ!!!!」
怒りバロメーターが天辺を突き破る。
「貴方は社交辞令という言葉を知らないんですか。初対面の人に向かって何て口の利き方するんですか。」
「人以下の存在に対する礼儀等持ち合わせていませんけれど。 虫けら如きが一人前に説教するとは・・・これはこれは、笑止千万だ。」
「はいっ?むっ虫けら?!」



何を言っても棘で返される。
その険のある言い回しでパロマは直感的に、『この人物とは仲良くなれない』と思った。彼女は体勢を立て直し、突然現れた深紅の瞳の青年から視線を逸らさず、しっかりと向かい合う。
「出会って早々こんなに態度の悪い人、見た事ない・・・。」
「おや、僕も同じ事を思っていましたよ?」




―――このムカつく人物とはぜっったいに打ち解けられない。打ち解けたくもない!




二人同時に、同じ事を思った。
辺り一面が冷たい冷気に覆われる。二人を見下ろす6体の甲冑もどこか事の顛末を見守る様だった。
にらみ合った二人の目線の中央では、バチバチと火花が散っている。
どこからともなく、試合開始のゴングがカーンと鳴り響いた。


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bkm


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