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「はっ!!!!」
真っ先に正気に戻ったのはビバルディだった。
「罪人が逃げ出したではないか!!何をしておる!お前達捕まえに―――っ、エース!!!おぬし、腹を抱えて笑っている場合か!早く後を追わぬか!薄のろめが!」
「あははは、陛下、俺はダメですっ。腹が痛くて、今は動けません。あっはははは。」
「くぬぬぬうっ・・・・この能無し騎士が!!使い物にならぬわ!!!おぬし達も突っ立ってないで早く捕まえてまいれ!!」
「しかし陛下、我々は貴方様の御身を守るのが任務。他に護衛がいない現状では、ここから離れる訳には参りません。」
「ええい!どいつもこいつも役立たずのクズ共が!!おのれの剣でおのれの首を掻っ切ってしまえ!!!!」
ビバルディの激昂にひれ伏す兵士達。エースは未だ腹を抱えて笑っていた。
追ってこないのが分かると、パロマはさらに加速してその場から離れた。
けれど、逃げた方向がまずかった。
せめて逆方向に逃げていれば二階へと続く階段があったのに、向かった先は『審判の間』。
つまり、行き止まりだ。
そうと分かってはいても、今から方向転換は出来ないパロマ。
何とか逃げ道はないのだろうかと焦りながら走っていると、審判の間の目前のドアが急に開いて、誰かが目前に立ちはだかった。
「っ!!!」
急な事についていけず、思いっきりぶつかったパロマは審判の間まで吹っ飛ばされ、もんどり打って倒れ込んだ。パロマは地面を何回転かした為、目が回って前後左右がフラフラになってしまった。
逆にぶつかった相手はドアから出て来たまんまの姿勢で、一ミリも動いてはいない。
蒼い顔をして自分の衣服をパンパンと叩いている。
「うっ、汚い塊とぶつかってしまった。あぁ、殺菌だらけになってしまう。」
パロマはフラフラした頭で、審判の間の入口に目を向ける。
赤いチェックのジャケットをそつなく着こなす姿は、転がった兵士達とは全く異なる存在だった。スラッとした華奢な体格の青年は、武装している訳ではないのに、全速力のパロマがぶつかっても、何も堪えてはいない。
いや、ある意味では堪えている。パロマが当たった位では少しも汚れてはいないだろうに、必死になって衣服の乱れを直している。
しかし、パロマにとってはそんな事よりも―――




―――部分的に人間じゃない人、三人目発見しちゃった!!






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bkm


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