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「どうしたの?早く抜きなよ。この俺が自ら君の力量を測ってあげるって言ってんだから。」
凄んだ剣の達人が怖すぎる。
「私の刀さばきはものすごいですよ?恐れ慄かないで下さいね。」
へっぴり腰で、とまでは口には出さない。刀を手にした自分の姿は、鏡を見なくても想像が付く。滑稽過ぎて、大笑い間違いなしだ。
自分でもビックリする位おどすのが下手だったが、それには気付かずエースもビバルディもパロマの次の一手を、今か今かと待ち構えている。
「う、後ろに控えた方達にもし掠りでもしたら、スパッと切れちゃいますよ?それでも、良いんですか?!」
(なっ・・・何で待ち構えているの?!早く逃げて下さいよ!!)
古今東西、武器を構えた悪人が現れたら、まず優先すべきは主君の命、たどパロマは考える。いくら首狩り一族だとしても、高貴な血を一滴たりとも流す訳にはいかないだろう。只でさえ、兵士の大多数が倒されている状態だ。パロマがやった訳ではないが、これだけバタバタと倒れていたら、パロマに腕があると見なすしかない。そうなると、この人数で大事な女王様を守りきるより、一度逃げて、態勢を整えてから出直した方が、断然有利に決まっている。現に、兵士二人はビバルディを囲みながら、しきりに後方を気にしている。後は、上役の合図待ちと言った所か。
4人がいなくなったら、スタコラサッサとその場から姿を消すだけで良かったのに・・・




(・・・・・・・・・何で?)




パロマの前に
どーんっと立ち構える
上役の筈のエース。


一歩も動こうとしない。


騎士隊隊長ならば、部下を従えて一旦引くと思っていたのに、何を血迷っているのか、嬉々としてパロマに向かってくるではないか。その態度は余裕綽々で、ワクワクしてさえ取れる。
自分の腕にそんなに自信があるのか。
それとも、生っ白いパロマを軽んじているのか。
まさか、こんな時でも策も何も講じない、只の戦闘好きなマイペース騎士なのか。
「ん?後ろ?良いから良いから、早く抜いて?」
友好的な笑顔とは真逆に、彼の態度はあくまでも好戦的だった。




この騎士、意識的にやっているんじゃないのかと疑ってしまいたくなる位、パロマの期待を裏切る行動しか取らない。



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bkm


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