06
出て来た台詞は、思いもよらない物だった。
パロマの動きが一瞬で固まる。ドクンと大きく鼓動が跳ねた。
「―――ビックリした??実は俺、頭の後ろに目がもう一つあるんだよね〜。・・・・冗談だよ?」
パロマは切り株から転げ落ちた。うっかりエースの言う事を信じてしまったのだ。
この世界はウサギの耳やら猫の耳やらが付いた住人がいる位だ、ひょっとしてひょっとしたらと思ってしまった。心臓をバクバクさせながら体勢を立て直す。
切り株に座ったエースは、そんなパロマを眺めながら頬杖を付いて話を続ける。焚き火の明かりが彼の笑顔に光と影を作り嫌に凄味が出ている。
「君、俺がハート城の騎士だって分かってから、俺の事、警戒しているだろう?下手に喋らない様に一歩引いていた。城全体に対してなのか俺個人に対してなのか、何にしても君には後ろめた〜い事がありそうだ。」
燃えた木々がパチパチと音を立てる。熱い位の筈が、パロマは底冷えがしてならなかった。エースの詰問はまだまだ続く。
「帽子屋屋敷が話題に上がったら酷く動揺していたよね。あれは何?役持ちやその関係者以外からしたら、あんなのただの世間話だろ。一般人があんなに取り乱して驚くかね。あれは部外者って感じじゃなかったよ。」
パロマは黙ったままエースの話を聞いている。いや、何も話せないのだ。一言も言い返す言葉が見つからない。鼓動ばかりが早鐘の様に耳に響く。彼は真面目な顔で決定的な事を告げる。


「・・・やっぱり、あれか。帽子屋さんの領土からユリウスと劇的な駆け落ちをしてきたとか!!」


(は?・・・・はい????)
パロマは瞳を大きく見開いてエースを見詰めた。
何にも喋らなかったせいで、またもやあり得ない方向へ話が向かっている。
やはり彼の中ではパロマとユリウスの夫婦説は健在だった。しかもその架空の逸話にすっごい尾鰭をくっ付けた。
結論はとんでも無かったが、中間までは反論できない程当たっている。
彼はユリウスとの会話に集中していたのではなかったのか。あの短い出会いでこれだけの事を察するなんて、卓抜した洞察力の持ち主だとパロマは舌を巻く。
(でもどうしようっ、言い訳なんて一つも思いつかない・・・)


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bkm


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