4

空はベーコンレタスバーガーとチキンナゲット、コーラのLをいつも頼む。
毎回毎回、それを飽きもせずに、数日続けてでも、それを食べる。
ここに来るといつもそうだ。

「空、買ってきたよ。」

席に戻り、声をかけると空はうれしそうに笑った。


「なー柊。俺さ、やっぱり柊のこと好きだわ。」
「そ。ぼくも好きだよ。」

いつものやり取り。
言葉に出さずとも、わかっているというのに。


「ね、柊。今週の日曜日、空いてる?」
デートしたい。と、空はベーコンレタスバーガーを頬張りながら言った。
レタスが落ちそうになっている。
少し濡れた唇が色っぽい。



「いいよ〜。どこに行く?」
「おうちでだらだらいちゃいちゃしたい!」


返事が速かった。
すっごく早かった。

そうしよっか、というと空は嬉しそうに笑った。
えっちなことも、する?ってからかうつもりで言うと、赤くした顔をブンブンと縦に振るものだから笑ってしまった。


「じゃあ日曜まで柊も浮気禁止な!」

ふんすっといった効果音がつきそうな様子で空は言った。

周りの人がちらちらとこちらを見る。
同性同士のカップルに困惑しているのだろうか。
しかもお互いに浮気を容認している、となったらそりゃあ普通の人は目と耳を疑うだろう。
ちょっとムカついたから、空の浮気相手の女の子達に評判の、"とろけるような笑顔"を向けてやる。
空は少しムッとした。
隣の席の人は慌てて顔を逸らしたのでぼくは少し気分が良かった。


これが正しいぼくらの形。
ぼくらの適切な距離感だ。
きっと、誰にも理解されない。理解されなくていい。

ぼくが空の一番なら。最後に空が帰ってくる場所ならば。
それでいいんだから。




ご飯を食べ終わったあとは、少し言葉を交わして自分の家への帰路をたどった。
わざわざ相手の家への送り迎えなんてしない。
代わりに、家へ着くまで電話をして帰った。


だって、一緒にいると愛しさで溶けちゃいそうになるから。
空が優しくて甘ったるいから、ぐずぐずに溶けちゃう。





これがぼくと空。
ぼくはとっても空が好き。
空もとってもぼくが好き。

そんなかんじ。







<終>



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