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▼ 席替え

(※学パロです)




 今日この日をもって、入学してからようやく一年と三か月目。彼はただ、唯一希望を託していた紙切れを握りしめ、魂が抜けたように、その白い数字を凝視していた。
 少し待てばすぐに判明するというのにそれすら待ちきれないのか、隣が誰か探ろうと煩くざわめく周囲の人間。

 ――だからどうして、こうなるんだ!

 がたがたとやかましい騒音に正気を取り戻せば、ぞろぞろと各々の机を運び始めるクラスメイト達。男女別ではあるが皆が同じ服装というのは何か――あぁ、そういうことではなくて!
 問題なのは……問題、なのは……!

「……貴様……何か細工してるんじゃないだろうな……!」
「そんな、人聞きの悪い。全部偶然だよ、グーゼン」

 頬の微弱な痙攣を自覚しながら、僕はそいつを睨みつけた。
 僕と同じで《移動する必要のない》女子生徒が、それはそれはにこやかに和やかに軽やかに微笑んでくる。それから彼女は自分の胸元を指差して、

「それとさ、いい加減名前で呼んでよ、リオン君」

 名前だよ、と、青いプラスチックの名札に記された文字を突っついていた。……誰が呼ぶものか!
 一年の頃はまだ、やたらに絡んでくる鬱陶しい他のクラスの女子生徒、という枠組みに収まっていた。委員会や部活が同じだったり、学活行事で何かとライバル視されたり。
 その程度ならまだマシだったというのに――三か月間、二人ともが全く同じ席なんて、どう考えても有り得ないだろう!

 少しも納得いかないまま、周囲の流れにのせられて渋々着席する。それが多少荒々しくなってしまっていたのか、前列に座った背中がびくりと揺れた。
 途端に、すっと肩の力が抜ける。前の席に「すまない」と声をかければ、若干狼狽した様子で「いいよ」と返された。
 ……ふと、袖に感じた違和感にしばらく無視を決め込んでいたが、だんだんエスカレートしてきたそれにとうとう観念して仕方なく横目で右隣を見やる。
 しつこくぎゅううと僕の腕を指でつまんでいたそいつは、僕の目線が自分に向いたとわかると、何が嬉しいのか再びにんまりと笑った。

「……なんだ」
「またよろしくね、リオン・マグナス君」

 愉快そうににんまり微笑む隣席の女に、また、これから先の学校生活に。
 ……軽く、目眩がした。



(だってリオンがくじ引くの、いつも最後なんだもん)





'100308
'100314 再掲載
お題「席替え」
主催企画へ投稿したものです。


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