girl | ナノ


▼ 息がまともにできません

 今日、私は初めて消え失せたいほどに後悔した。いやまあ初めてじゃないけど。本気で、心の底から、宇宙の果てまでとはよくわかんないこと考え出すくらいには。とても。

「なんかほんとごめん……ぶっちゃけ女の子なら許されるかなと思った」
「……………………」
「ちょっ、「なにこの痛いやつ」みたいな目で見ないでお願いだから! 事実だから余計に痛いいいい!」

 あああ、こんなことならナナミさんに頼み込んでチョコレートだのなんだの作ればよかった。でもそれじゃお金かかるし、居候の分際で何様だゴルァって自分が叫ぶ。
 でもこんな、こんなんじゃ……。

「ううっ……笑うならいっそのこと腹抱えて地べた這いずり回ってお天道様に割れたお腹をさらしながら笑いなさいようわあああん! レッド慰めてえええ!」
「はっ、ちょ、おまっ」
「うわ、グリーン泣かせた」
「しまいには殴るぞお前」

 ソファに乗り上げてレッドの膝に思いきり飛び付く。あらやだ見た目通り細い。ちゃんと食べてるのかこの子、……じゃ、なくて!

「……おい、レッド」
「言いたいことは、本人に直接言いなよ」
「お前に言われるとなんか釈然としないんだが」

 何よこのぐだぐだ展開。あああやばいやばいほんとに泣きそう。涙声になってないよね。グリーンなんかに弱った姿を見せるなんざ屈辱以外に該当しないわよ。即時撤退に限る。

「もーいいわよ帰る帰る! モモンジュース一気のみコースよちくしょう! 行こうレッド!」
「ここが僕の家なんだけど」
「待てって!」

 ちょ、引き留めるのはともかく二の腕掴まないで! これでも女の子なんだから! 贅肉気にしてるんだから……って、レッド何処行くのちょっと待って! そんなどうでもよさそうな目で手を振らないで!

「置いてかないでえええ! デリカシーゼロと二人きりなんかにしないでえええええ!」
「よしちょっと口閉じろ名前」
「え、なに? おしゃべりしか能のない私に口を閉じさせて何をさせる気なの? ボディランゲージ? 人間の英知を捨てろと?」
「…………」

 そんな呆れた顔しなくても、自分の発言が支離滅裂で滅茶苦茶なんて知ってるし。何か言ってごまかさないと見っとも無い顔さらしちゃいそうで、それは現在のこの関係じゃ私のプライドが許さないわけで。
 だから、突然口が動かせなくなって驚いて咳き込んだのも無理もないことで。

「げっほ!」
「ぶはっ……おま、咳き込むか普通!」
「いや、だって普通に無理が、あ、……」
「……こ、ういうことだよ、あほ」
「…………」
「何か反応しろって」

 柄にもなく照れくさそうな顔にすら釘付けな自分が確かにいるわけで。



(……グ、グリーンのくせに、顔真っ赤、なんだけど)
(安心しろお前には負ける)







'100320 元拍手お礼文
title:Aコース
バレンタインに書き損ねたネタを引っ張り出してきました。時々砂糖吐くくらい甘い話を書きたくなります。14歳14歳! 初々しく!


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