▼ キミが遠い
晴天の今日は夕日までもが強くて、時折並んだ影が交差する。歩調も加味して、ゆらゆらゆらゆら、不規則に体を揺らす。
隣で並進する彼の肩は、いつの間にか私の高さを追い越していて、もう三年立ったんだなぁと柄になく感傷に浸った。
亜麻色の癖毛は今もなおご健在。面影までは消えない横顔の余裕を盗み見て、なんだか居心地が悪くなる。
胃の底に鉛が溜まったような圧迫と不快感。そしていつまでも成長しない自分に自己嫌悪。
……ううん。
ため息をのみ込んで、今はただ足を進める。
偶然昇降口で鉢合い、微妙な雰囲気のまま帰宅を共にしているわけ、だが。
別に声をかけたわけでもないのに彼が歩幅を合わせてくるから、成り行きで。
いつからキミは変わったのかな。
私の知らないキミになっただろう。
――あの不思議な赤ん坊が、ツナの回りを彷徨き初めてから、彼はゆっくり、でも確かに成長している。
いつもの曲がり角。
まっすぐ行けば私の家。
右に曲がればツナの家。
山本や獄寺が欠けたせいで、以前の賑やかな別れはない。違和感に対する違和感と焦燥感が押し寄せる。
……そして、彼は微笑むのだ。
夕焼けに照らされ鮮やかな髪を靡かせて、変わらない柔和な笑顔で。
「じゃあ、またね、名前」
'090108
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