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▼ 短いスカートに恋をして

「名前ちゃんはスカート短くしないの?」
「っ、げほっ!」
「だ、大丈夫!? 名前ちゃんっ」

 いや、だって。京子ちゃんが当たり前のように首を傾けたもんだから。マイマザーが丹精込めてチンしたミートボールが気管を塞き止め馬鹿みたいにむせかえった。そのまま詰まって窒息するんじゃないかと背筋が痺れた。
 あぁ何やってんの、可愛らしい京子ちゃんに余計な心配をかけてしまったじゃないか自分。周りも心なしか引いてい……え、ちょっと冷たいなみんな。
 混乱から脱し、丸めた背中をさすられ一呼吸。差し出されたお茶が至高の水に見えた。あ、どうもすみません。

「ごめんね、いきなり変なこと聞いちゃって……」
「や、へーきへーき。驚かせてごめんね。あとお茶ありがと。……えっと、それで、なんだっけ? スカーフが洗濯で縮んだ話?」
「名前ちゃんのスカートのことだよ」

 ジョークも軽くいなされてしまった。さ、流石は並盛中のマドンナ……! 京子ちゃんほどの器量はないからせめてスルースキルくらい身に付けないとな。まぁ関係ない話は放り投げるとして。
 昼休み、小学校とは違って自分の好きな場所で食べれるお弁当。因みに花は先生の手伝いに連行されて行った。悲しい係の定めである。……ごほん。ともかく。
 無事中三に進級した現在に至っても、未だに私のスカート丈が膝下であることに対してとうとうメスを入れてしまった京子ちゃん。今まで誰もが放置してくれてた話題なんだけどなぁ。大して珍しくもないし。彼女は純粋な興味みたいだ。いや、特に聞かれて困る話題でもないけど。
 箸先をかえ、ご飯粒を集めつつ、美少女たちの足をちら……いやガン見する。ってうわ足細ッ! ねぇ彼女BMI18あんの? ちゃんと栄養摂ってんの? 尻歩行で痩せてみろってかちくしょう。

「や、その。あんまりスカート自体好きじゃないんだよね。似合わないし」

 それに、普段ジーパン主流の人間には膝上スカートなんて恐怖の対象そのものなんだよ。学校は規則だから仕方ないけど(男子制服で登校した日には風紀委員長に咬み殺される!)、長さは膝小僧が隠れる程度でぎりの妥協点だ。前の学校じゃ膝下が規則だったし、なおさら。
 つーか人前に曝せる足じゃないんだって。最近真面目に体重計恐怖症になりかけたよ。軽い死刑宣告だよあれ。まぁなんだ、その……話を総合すると、我ながら小心者だという自覚はある。

「えぇっ、もったいない! 絶対似合うよー!」
「私より、京子ちゃんみたいなかわいー女の子が着るべきだよ。ほら、目の保養になるし」
「でも絶対可愛いよ、名前ちゃんのスカート姿! 私も見たいなぁ。ツナ君もそう思うよね?」

 ははは、そこでどうして偶然通りかかった人間に同意を求めますか京子さん。表情筋がひきつるあまりにつまんでいたタコさんウインナーが滑って弁当箱にダイブした。いきがいいこって。
 話しかけられた当人もなぜ会話の前後を把握してるのか、へらりと笑って頷く。駄目ツナと言われる回数が徐々に減少傾向にある彼の、素直な意見が私に追い討ちをかけた。急所ストライクで。

「うん、オレも似合うと思うよ。名字さん(反応とか)かわいいし」
「うおおぁっ、誰かこの男の口塞げー!!」
「え、えぇっ!?」

 なんで私の周りはこんな人たちばかりなんだ!



(バッターアウト!)(一瞬喜んだ私もばかー!)




'090108
'091205 加筆
title:Aコース


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