girl | ナノ


▼ 瞳に映る

「お前、本当に行かなくてよかったのか? 招待状、イナルナから届いてたろ」
「何を言われますか今更。レフィだって、みんなともうずっと会ってないでしょ。行ってくればよかったのに」

 大海を隔てた国で行われているだろう式典を思い、二人で顔を見合わせて笑った。わがまま殿下と民から疎まれたあの少女も、今や大国を体で負う女王なのだ。その立派な姿を見れないのは、やはり勿体ない。

 長きにわたるサラやライラ師匠の尽力で、神の座から無事生還したレフィは、ここ数ヶ月を私の仕事に付き合って過ごしている。
 本当なら。レフィは、五体満足であることに喜びを噛み締め、人間として、自由な生活を満喫しているべきなのだ。
 もう刻の審判が下されることはない。レフィが願った、永久に命の世界が続く平和が約束された。私なんかに構わず、自分のやりたいこと探しにでもいけばいいのに。

「俺が見てねーとすぐに行方くらますのは誰だよ。旅の間だってそうだ。今度の行き先は東の国だったか?」
「そーだよ。ちなみに出発は明日の早朝」
「はぁ!? 準備してんのかよお前!」
「まだですが何か問題でも!」
「おま……もっと計画性持てよ……!」
「ですよねー」

 ハイネを真似てへらりと笑う。と、光の速さ(目測)でこぴんが額を強襲した。
 よ、容赦無い……! 脳みその奥までがんがんしてるよ……! コピンさんじゃないだけまだいいけど!

「また勢いだけで飛び出そうとしていやがったな……。三ヶ月も連絡とれなくなった時なんか、みんな大騒ぎだったぜ」
「知ってる。アシュレイたちにしこたま怒られた。サラには秘薬の実験台にされた。鉄拳制裁も惚れ薬シグマもマジ怖い」
「……なんだよ最後の」
「…………も、黙秘」
「なんだよそれ、更に気になるだろーが!」
「ユウくんごめんなさい許して」
「ユウ……」

 レフィが具合が悪そうに頭を抱えた。そんな仕種しなくても、穴掘って埋まりたいのはこっちよちくしょい! あああもう、顔が熱くて仕方ないわ!

 あれから一年たったとはいっても、まだ戦火の傷痕は深い。聖バルティア王国が難民の受け入れを行っているが、バルティアだって被災国、人数制限は否めない。また、如何なる救命政策をとろうが、国自体の再生が進まなければ意味をなさない。
 だから、世界の未来を担う戦いに参戦した私も、今度は世界の再建に向けた活動に取り組んでいる。他のみんなだって、それぞれの道を歩んでるらしい。エルルはお医者さん、アシュレイやハイネは近衛騎士団の一員に。シオンは世界的にも有名な劇団に見事合格。グレンは故郷のレスト聖会再建と、ディーノさんはアシュレイの付き人、魔法探偵士ユウくんは今日も奔走しているんだろうか。それに、そう、サラは学長代理になってるんだっけ? あの人また脱走したらしいし。

「おーい、一人で遠い目してないでさっさと準備しろっ!」
「ほいさっさー!」

 澄み切った青が私を見る。彼が文句を言わないなら、どうせだし、嫌になるまで付き合ってもらおう。そのなかで、レフィがやりたいことも、見つかればいい。
 落ち着いたら、またみんなでキャンプに行きたいな。今度は強化合宿とかじゃなくて、みんなで川を泳いだり、キャンプファイヤー囲んだり、あと花火とかもしたいなぁ。

 ……よっし! そのためにも、今は一生懸命できることを頑張りますかっ!

「よしきたじゅんびっ、
 ………………あ」
「今度は何だよ……!」
「船のチケットとってないから明日は行けないや」





'100921

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