Short novel | ナノ


デフィリニウムに溺れる  




一つの指輪が見出された


 それは中つ国に生きる全ての自由の民にとって最悪の知らせだった。裂け谷を治めるエルロンドは急遽各種族の代表を集め、指輪の処遇を話し合うための会議を開いた。イスタリ、エルフ、ドワーフ、人間、そして一つの指輪をここまで運んできたホビットの5種族。エルフからは裂け谷を含む三つの領国が参加し、そのうちの一つであるロスローリエンからはガラドリエルの娘アレゼルが参加した。





× × × × × × × ×





「アレゼル、そっちはどう?」
「大量よ。これならホビットたちもお腹いっぱいになるわね」

 ほら、と収穫した大量のキノコや果物を見せる。確かにこの量なら彼らも満足するだろう。自分もアレゼルほどではないが沢山収穫することができた。
 指輪を捨てる旅に出て数ヶ月が経つ。初めは9人で出発するはずだったこの旅にアレゼルが加わったのは戦闘中一番ホビットを守ることができそうだったのと、気配を消して動くことができるため仲間の役に立てるというのが理由だった。
 野営に戻ると、二人が抱えた沢山のキノコを見てホビットたちがぱあっと顔を輝かせる。


「森にたくさん生えてたの。サム、これ全部食用で間違いないわよね」
「はい」
「じゃあ早速調理しましょうか」

 調理器具を用意し、アレゼルがサムと一緒に料理を始める。今日は随分たくさんの食糧が手に入ったからさぞ美味しい料理になるだろう。夕食が出来るまでの間、レゴラスは恋人が料理する姿をジッと見ていた。
 森に住んでいたら、ましてあのガラドリエルとケレボルンの娘であれば料理などした事がなかった筈なのに、一体どうやって覚えたのだろう。・・・・・・だが活発な彼女のことだ。森の外に出て狩りでもした後に自分で獲物を調理して食べたことがあるかもしれない。
 そんな事を考えている間に料理が完成し、アレゼルが皆に集まるよう言う。

「ほら、レゴラスも早く」
「はいはい」

 皿に盛られていたのは収穫したキノコと緑色の葉っぱがある野菜を炒めたものだった。側には焼いたソーセージもあり、匂いが食欲を掻き立てる。食べ始めてから、ふとアレゼルの方を見ると口の端に食べかすを付けていた。

「ここついてるよ」
「え?」
「ほらここ」

 親指でそれを拭い口に含むと、アレゼルが顔を真っ赤にする。

『やめてよ皆の前で!!』
『指で取っただけじゃないか』
『問題はその後よ!!』

 いきなりエルフ語で話し出す2人。しかし内容は西方語しか知らない者でも様子を見れば丸わかりだ。やれやれ、と他の仲間が食事を進める中、ボロミアだけは二人の様子をジッと見ていた。そんな彼を見たピピンが「ねぇねぇ」とボロミアに尋ねる。

「ボロミアは故郷に恋人とかいないの?」
「残念ながらな。俺は武道一辺倒で生きてきたから」
「え、そうなの?」

 思わず驚いたアレゼルが喧嘩(?)を中断して尋ねる。

「ああ。何度か見合いの話は来たが、結婚する気にはならなかった」
「そう・・・・・・。旅の途中か、それか終わったら、素敵な人が見つかるといいわね」
「・・・・・・ああ」

 ご馳走様、と言ってボロミアは空になった皿を洗いに近くの川へ行った。


 


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