Short novel | ナノ


※オリキャラ注意  




「( 綺麗だなぁ…… )」

 夜の宴の間、レゴラスは向かい側に座る恋人のアレゼルをじっと見つめていた。父スランドゥイルの庇護のもとで暮らすアレゼルは銀粉がついた藍色のドレスを着ていて、まるで星空のようだと思いながら手元のワインを飲む。宴が終われば彼女と二人きりで…

「レゴラス、何をニヤついている」
「ニヤついてなどいません」
「ニヤついておっただろう。そのような顔ばかりしておったら、いずれ嫌われてしまうぞ。のうアレゼル?」
「はい?」

 スランドゥイルが話をふると、アレゼルは瞳をぱちくりさせる。レゴラスがにっこりとしながら何でもないよと言うと、アレゼルは頭の上に疑問符を浮かべながら酒を口に含んだ。
アレゼルは600年程前に闇の森にやって来た。ドルイニオン産のワインを岩屋に届けるのが仕事だったアレゼルの物怖じせずに堂々と意見を述べる姿勢をスランドゥイルが気に入ったのが始まりだ。レゴラスもアレゼルが森に来た当初はさほど意識していなかったが、慣れない場所で不安気にしているアレゼルの姿が儚いものに見えて安心させようとしているうちに、レゴラスはアレゼルに惹かれていった。
アレゼルの隣にいたエルフが酔いが回ったと席を外す。すかさず隣にレゴラスが移動しようとするが、別のエルフが席を積めた。ガックリと肩を落とすと、アレゼルが不思議そうにレゴラスを見つめる。

「王子?どうかされましたか?」
「いや……、ちょっとワインを飲み過ぎて……」
「飲み過ぎは体に毒です。お部屋に戻られたほうが宜しいのでは?」
「何を申すのだアレゼル。レゴラスは余の息子、これしきの量で酔うはずがない」
「父上が強いだけです!すまないアレゼル、一緒に部屋まで付いてきてくれるかな?」
「は、はい」

 スランドゥイルが視線で「無粋なことはするな」 と語りかけるのに対し、レゴラスも「ご心配なく」と返す。下手なことをすればアレゼルに嫌われてしまうのは必至だ。第一酔った勢いで好きな女性を襲うなんて(自分は酔っていないが)、男のすることではない。
宴会場を出てしばらく歩いていると、レゴラスはアレゼルの手をとって外の見物台に出た。

「お部屋にいかれるのでは?」
「少し外で酔いを覚ますのもいいかな、って。それと、二人っきりの時は敬語は無しだって言ったはずだよ」
「でも誰かに聞かれたら……」
「今はほとんど皆が宴会場にいるんだから大丈夫さ」

 アレゼルの髪を優しく梳く。耳の横にある三つ編みを手に取ってキスを落とすと、そのまま耳に吸い付いた。アレゼルが緊張したように身を固くするとレゴラスはくすりと笑って唇を離す。こうすると毎回同じ反応が返ってくるのが面白くて、二人っきりになるとレゴラスはいつもこうしていた。

「ホントにアレゼルは可愛い反応をするよね」
「意地悪レゴラス…」

 王子と王の庇護下にあるエルフ。スランドゥイルもアレゼルを気に入っているため堂々としていれば良いのだが、将来は自分の娘を王子の妻にしようと目論む輩がいてアレゼルに危害が加えられる可能性が拭えないため、この関係はもう少しの間秘密にしておこうと二人で決めていた。アレゼルがレゴラスの胸に頭を寄せてゆっくりと抱きあうと、心が。早く彼女のことを周りに打ち明けたい。

「行こうか。ここにいたら体を冷やす」
「そうね。……あ、待ってレゴラス」
「何?」

 振り返ると、アレゼルが少し背伸びをしてレゴラスにキスをする。すぐに唇を離そうとするアレゼルを抱き寄せてもう一度キスをすると、二人は部屋へ向かった。


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