まっしろい日に

鬼は火鉢にあたりながらうとうとしているようだった。袖を通さずに肩にかけただけの綿入れが、ずり落ちる寸前のところで踏み留まっている。外ではちらちらと白いものが降っていた。


「甘い物は好きか」

「出し抜けになんだよいきなり」

「我は大福が好きだ」


鬼は「へぇ」とも「ほぅ」ともつかぬ声で相槌を打った。


「食べるか」

「今?」


眠そうな目を擦って此方を見上げる。暇が出来たから遊びに来たと言っていたが、存外忙しい合間を縫って来たのかもしれなかった。


「雪を見ながら食べる大福もなかなか良いものぞ」

「今はちょっと遠慮しとくわ」

「眠いのか」

「アンタの顔見たら安心しちまってよう」


ふぁあ、と欠伸をする。猫のように背中を丸めて、今にも眠りこけてしまいそうだ。

ふと悪戯心が芽生えた。


「アンタとも長い付き合いだしよう、まぁ一緒に居る時間は野郎共の方が長いんだが、なんつうか、ほら、それとはちょっとこう違うような感じの」

「ほう」

「多分気ィ抜いてられるからじゃねぇかとは思うんだが」


そこまで言うと長曾我部は再びうとうとし始めた。かくりかくりと頭が上下している。
好機だ。


「先程安心すると言ったが」

「ん……ああ」

「こういうことは考えなかったのか」


耳元で囁いてから、耳たぶを甘噛みしてやった。


「うおあああっ!!?」

「くっ、くくっ」


体の均衡を崩して畳の上に手を突く。眠気は吹き飛んだようで、ぱちぱちと瞬きを繰り返していた。


「なっ、な、な」

「あまり気を抜いていると、いつ狼にならぬとも知れぬぞ」

「あ、アンタはどっちかってぇと狐だろ」


わなわなと震えながらそんな事を言う。


「どちらでもよいが、貴様はいつでも狩られる側ぞ」

「……ッ、ばっかやろう」


上手い反論が思い付かなかったのだろう。顔を真っ赤にしながらそれだけ言うと長曾我部は綿入れを頭から被って丸くなった。


「目が覚めたのなら大福はどうだ」

「いらねぇ」


もごもごとくぐもって聞こえたぶっきらぼうな返事に、思わず笑みが零れた。



さわらび様よりキリ番2300のリクエストとして頂きました。
就親で戦国ほのぼの甘いを希望した結果です。

軽い言い合いをしながらまったりする二人に癒されます(*´д`*)
アニキは一生ナリ様にしてやられてしまうに違いないww
真っ赤になってそっぽ向いちゃうアニキ可愛いです!
眠るアニキを見守るナリ様の姿を想像するとたまらない…。
起きたらまた一悶着ありそうな気もしますがw

素敵な小説、本当にありがとうございました!(//´◇`//)


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