鬼の生まれしわけ(2/4)

「うかつ……」
苦々しげに元就は吐いた。
被っていた布団を剥ぎ、横たわる自身の太もも辺りをその目は眺める。
目が覚めて感じたのは何とも言えぬ冷たい感触であった。
それがなんであるかを悟り、確かめて出たのは深いため息。
「夢精などいつぶりであろうか……」
淫夢など見た覚えもないし、恐らくは生理現象だろう。
まったく迷惑なことである。
しかも解せないのは吐精したはずの男根がまだ持ち上がっていることだ。
ともかく処理はしなければならない。
「元就様、お目覚めでござりましょうか?」
閉じていた障子がスッと開いて、隙間から男の子の顔が見えた。
「ご、ごめんなさい……!」
元就が何かを言う前に敬語も忘れ、真っ赤になった顔が目を瞑って俯く。
それも仕方のないことだった。
何故なら事実を確かめるために元就は被っていた布団を剥ぎ、その足元を露わにしていた。
細くしなやかな筋肉のついた色の白い足元にはふんどしまで見えており、そして傍目から見てもそれは濡れていた。
流石に失禁したとは思っていないだろうが夢精の事実はその赤い顔からもわかったと言える。
しかもまだ収まりついていない物だ。
赤くなってしまった童子に元就は声を掛けた。
「布団を汚してしまったな。すまぬ」
「いいえ……そんな事よいのです。でも……あの……」
見られた本人よりも口よどみ戸惑う姿は見ていておかしくもある。
元就の口元は知らずの内に緩んでいた。
だがその顔も次の言葉で真顔となる。
「あの……私でよろしければ……お慰み致します……」
恥ずかしそうにしながらもその眼差しは熱い。
「それは要らぬ世話よ」
自身への相手の好意を見て取り、はっきりと物を告げる。
明らかに傷ついた表情を見せる童子の姿にほんの少し胸が痛むが事実は事実だ。
「我にはそなたのような童を相手する趣味なぞ無いわ」
まだ元服もしていないような幼子に好意を寄せるなど有りえないことだった。
好色にもほどがある。
「今朝方のことは見逃してやる故、そなたも忘れよ」
元就の指摘に目の前の童子は驚いた表情を浮かべ、そして焦ったように口早に言葉を述べる。
「も、申し訳ありませぬ。起きているとは知らず……」
真っ赤になり黙った。
起きているかどうかと言う問題ではない。
そのような行為をしたのが問題だと言いたかったがこれ以上この話を続けるのも不毛だと元就は口を噤んだ。
俯く童子を見て今朝のことが思い出される。

まだ日も昇らぬ朝方。
何者かの気配に元就は目を覚ました。
身に危険が迫ったかと思ったがすぐに感じたその気配が昨日の男の子のものであると気づく。
ひっそり歩む気配に元就を起こさぬよう気を付けているのだと悟り、目を瞑ったまま寝たふりをしてやろうと思った。
枕元にある水差しが取り替えられる音がする。
朝から殊勝なことだと感心していればその気配がより近くまで来た。
額に手が触れる。
熱でも確かめているのかと思うが次の瞬間その考えが誤りだったことを知った。
柔らかく温かな感触が口に触れる。
口づけられたと知って思わず目を開けばぎゅっと目を瞑り、震える童子の姿が見えた。
衝撃に動きそうになるわが身を抑え、再び開きそうなその眼に自身は再び目を閉じる。
吐かれた吐息が頬を撫ぜた。
気付かれぬよう薄く開いた目の先に立ち去る童子の姿を見て元就はようやく目を開け、そして起き上がった。
まったく悪い冗談である。
だが理解出来た。
理由はわからぬがどうやらあの男の子は元就に惚れているらしい。
だからこそあの戦場で元就は救い出されたのだ。

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