この想いを言葉にしてみよう

「マルコってさー、サッチのどこに惚れたの?」
「はぁ?」
天気もいいので甲板に出て風に当たっていると、いつの間にかエースが隣にいて話しかけてきた。
「だってよ、サッチがマルコに愛してるだのなんだのってのはよく聞くけど、マルコは全然そういうのないじゃん?一体どこが良くて付き合ってるのかなーって思ってさ」
「……」
「なぁ、サッチのどこに惚れたの?」
「別にどこでもいいだろい」
素っ気無く返す。
「よくないだろ」
急に真面目な顔をするエース。
「愛してるやつの好きところくらい言えるだろ」
愛してるって、そんなさらっというな、さらっと。
だいたいそんなマジな顔するんじゃねぇよい。
困るだろい。
「なぁ、どこだよ?」
追求をやめないエース。
これは答えるまで引かねぇな。
「……まぁ、作る菓子は上手いよい」
あいつの作る菓子は本当に絶品だからねい。
俺の好みも熟知してるしな。
今日は一体何だろうねい。
「そんで?」
まだ聞く気かよい。
「あー、気が利くよねい」
俺が一休みしたいときはいつだってタイミング良く茶を持って来てくれるし、他のことだって言う前に色々やってくれる。
俺以外の奴にだって何かと世話を焼いている。
本当に感心するよい。
「他には?」
「まだ言わせる気かい?」
「だってまだ二つだぜ?それとも、もうねぇの?」
そんなわけないだろい。
あいつのいいところはたくさん知っている。
ただ、恥ずかしくてなかなか言葉に出来ねぇだけだい。
「……」
「サッチも可哀相だよな〜」
黙っていると、エースがため息を吐きながら呟いた。
「は?」
「だってよお、せっかくの恋人同士だってのになんか一方通行みたいじゃん?今言ったのだって、なんか当たり障りがないことばっかだし」
「……」
エースの言葉が胸に刺さる。
「本当にサッチのこと好きなのか?」
「……それは「好きに決まってんじゃねぇか」」
なんとか答えようとする俺の声に誰かの声が重なった。
「……サッチ」
「よお、マルコ。俺がいなくて寂しかったか?」
茶化すように笑い、俺の頭をクシャリと撫でる。
そしてエースの方に向き直って言った。
「おい、エース勝手なこと言ってんじゃねぇよ」
さきほどのエースの言葉に文句を言うサッチ。
「サッチだって気になってたんじゃねぇの?たまにはマルコの口から甘い言葉とか欲しくないのかよ?」
「バーカ、こいつがそんな柄かよ。それに、そんなことしなくったって俺とマルコはラブラブだっての」
なっ?と、腕を俺の肩に回し、そのまま自分の胸元に引き寄せてくる。
「ちょっ、やめろよい!」
「照れるなよ」
押しても引いてもビクともしない。
力じゃサッチのやつには敵わない。
「わかったろ、エース。今更言葉で確めなくったっていーの、俺たちは」
「はいはい、そーですか。じゃあ、お邪魔虫は退散するぜ」
そう言って立ち去るエース。



「全く、エースのお節介にも困ったもんだな」
苦笑いするサッチ。
「……本当は気にしてんじゃないのかい?」
“サッチも可哀相だよな〜”
先ほどのエースの言葉が胸で燻る。
「ちゃんとわかってるから気にしなくてもいいんだぜ?」
そう言って、また俺に笑いかける。
ちょっと困ったようにも見えるその顔に、胸が締め付けられる。
「さてと、ケーキが焼きあがったから呼びにきたんだ。食うだろ?」
「ああ」
「んじゃ、行くぞ」
そう言って食堂に向かうサッチ。
その背中を見つめながら考える。
「サッチ」
「ん?」
なんだ?と振り向くサッチにゆっくりと言葉を紡ぐ。

「愛してるよい」

ちゃんと聞いていなければ聞き逃してしまいそうな本当に小さな声だったがサッチの耳にはちゃんと届いたようだ。
心底驚いたような顔をしたが、すぐにこぼれんばかりの笑顔で俺を抱きしめてきた。
「すっげぇ嬉しい」
噛み締めるような言葉と抱きしめられる腕の温かさに、たまには胸の内にあるこの想いを言葉にしてみるのも悪くないと思った。


(心臓から唇、そしてあなたへ)



マルコの惚気話を書くつもりが殆ど惚気てないという事態。ていうか、考えてたのと違う。
初め考えてたことと内容が変わってくるから文章って不思議。
41だとマルコはなかなか素直になれません。
一度とことん惚気るマルコが書きたいです。
そしてお節介エース。
二人を心配しての行動です。
自分の言葉でマルコがなんらかの行動を起こすのも実は計算済み。


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