お花見

「うっわー!やっぱ綺麗だな!」
大きな声を上げてはしゃぐエース。
久々の上陸先は春島で、桜が美しい見ごろを迎えていた。
「故郷を思い出すな」
感慨深げに呟いたのは舞い散る桜に、その姿が実に映える着物姿のイゾウだ。
「そっちの故郷では桜が咲くのか?」
「ああ、ここにあるのよりも立派なのがな」
そう言って目の前の桜を見上げる。
「へぇ〜、見てみてぇな」
「いずれ見れるときが来るさ」
「へへ、楽しみだな」

「なんだか楽しそうだな」
二人でそのまま他愛もない話をしていると後から声がかかった。
「ジョズ!」
エースが驚いたように言う。
「明日の準備はもういいのか?」
イゾウがジョズに尋ねる。
今回の仕事の割り振りには3番隊も入っていたはずである。
「ああ、順調だ。俺の担当はほとんど済んだから休息だ」
「明日は宴なんだよな!!」
目を輝かせるエース。
それを見て、ジョズが尋ねる。
「なんなら、ちょっと宴の場所になるところを見に行くか?今なら準備もある程度済んだからな。邪魔にはならないと思うぞ?」
「行く!行く!」
すぐさま答えるエース。
そのまま三人で宴が開かれる場所へと向かう。



「なんだジョズ、戻ってきたのか?おっ!エースたちじゃないか」
ビスタが声をかける。
まだ準備中なのか近くの隊員に指をさしてなにか指示を出している。
「宴の場所を見せにな」
ジョズが答える。
「そっちはまだかかりそうか?」
「いや、あと少しだ。今回は前回よりもスムーズに進んでるな」
「そりゃよかった」
「うっわ〜、でっけぇ桜!なあなあ、和の国のやつはこれよりもでかいのかよ?」
「もちろんさ。これもなかなかだが、和の国の名物桜には及ばないな」
「すげぇな!」
見てるほうが楽しくなるほど、うきうきした様子のエース。
それを見て他の三人は自然と微笑む。
「お〜い、お前ら!丁度良かった!」
「サッチ。どうしたんだ?」
ビスタが尋ねれば、
「いや、明日の宴のための試作品が出来たから味見して欲しいと思ってな」
そういってサッチは美味しそうな料理の皿を差し出す。
「マジでか!食う、食う!」
嬉しそうな声を上げ、素早くエースが手を伸ばす。
続いて他の隊長らも同じように手をつける。
「うめぇ!!」
「旨味が効いてるな」
「……美味いな」
「確かにいける」
各々、感想を述べる。
「だろ!」
好評な様子に満足げなサッチ。
「そういえば、マルコは?」
不意にエースが尋ねる。
「そういえば見ていないな。まだ仕事か?」
イゾウが聞けば、
「いや、あいつの仕事は全体の総括だから仕事にしてもこの場にいるはずだ」
ジョズが答える。
「そういえば、しばらく見ていないな」
ビスタも答える。
「ああ、マルコなら……」
フフッと笑うサッチ。
「何だ急に気持ち悪いな」
「!。ひどいぞ、エース!」
「否定はできんな」
「ビスタまで!」
「……それよりマルコはどうしたんだ?」
このままだと話にならないのでジョズが割って入る。
するとサッチはシーッと唇に指をあて、ちょいちょいと手招きをしながら歩き出した。
不思議に思いながらみんなでついて行くと宴の場所からやや離れた物陰にある小さな桜の木の下でスヤスヤと眠っているマルコがいた。
「……珍しいな」
「ほんとだ」
ポツリと呟く、ビスタとエース。
他二人も物珍しそうに眠るマルコを見る。
「だろ?俺も見つけたときはびっくりしたんだ。気持ちよさそうだろ?」
小声でサッチが言う。
神経質なマルコは滅多に人目につくような場所で眠ったりはしない。
「起こすのは可哀相だな」
ジョズが呟けば他の四人も頷く。
「そっとしとくか」
そうイゾウが言えば、
「向こうにまだ他の料理の試作品もあるからな。試してくれよ」
ここぞというばかりに言うサッチ。
「ほんとに!!」
嬉しそうな声を上げるエース。
「「「「シーッ!」」」」」
四人から一斉に注意を食らう。
「……ゴメン」
シュンとするエース。
みんなでちらりとマルコを見る。
……どうやら大丈夫そうだ。
「静かに行こうぜ。静かに……」
サッチを筆頭に、静かにその場を立ち去る五人。
何事も無かったかのように眠り続けるマルコの体には、春島の柔らかい日差しと頭上の桜の花びらがヒラヒラと降り注いでいた。

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