子育てしましょ♪

「くっ、くるな!」
「そう言われても俺らお前の面倒みろって言われてんだよ」
マストの後に隠れながらこちらに向かって叫ぶ小さな陰にサッチはため息を吐いた。
「いい!」
「いいって言っても駄目なんだよ」
「あっち行け!」
これではまるで怯える小動物だ。
試しにお菓子を持ってきてみても見向きもせず、ただひたすらに喚いている。
「もうあきらめたらどうだい?」
「そう言ってもどうすんだよ?」
サッチがマルコを見上げる。
子供の目線に合わせながら必死の説得を試みるサッチに対し、マルコはすでにそれを放棄している。
「やっかいだねい」
「本当に……」
サッチは再びため息を吐いた。
「猫みたいだよい」
マルコがボソッと呟く。
「猫っつーより、リスかウサギだな」
サッチも苦笑いした。
そうして二人で再び子供の方に向き直る。
「なぁ、ハルタそろそろいいだろ?」
「いつまでもびびってんじゃねぇよい」
「だからその態度は逆効果だ、マルコ!」
仏頂面でイラついた声は相手を怯えさせる。
ほら、見ろ。
泣きそうになってんじゃねぇか。
「けど、これじゃ埒があかねぇだろい」
「ものにはやりかたってもんがあるの!」
サッチの言葉に渋い顔を見せるマルコ。
そんな顔すんな!
俺がおかしいみたいじゃねぇか。
「だったらお前がなんとかしろよい」
「わかってるよ!」
不満たらたらのマルコに怒鳴り返し、打って変わって優しい笑みをハルタに向ける。
「ほら、なんにもしねぇから、こっち来いよ。お腹空いてるだろう?」
「嫌だ!」
「嫌って……」
「俺にかまうな!」
サッチがいくら優しく接してもまるで効果は上がらない。
「……もう限界だよい」
恐ろしい声がした。
「あっ、マルコ!」
サッチの止める間もなく、マルコが隠れるハルタの体を掴む。
「いい加減にしろい!」
びっくりするくらいの声量だ。
ハルタも驚き、しばらくの間ポカンとしていたが、
「うわぁあああああ!」
泣きだしてしまった。
「バカ!何してんだよ!」
「こういうガキは一度言わねぇとわからないだろい」
「だからってそんなに怒鳴らなくても!」
サッチが慌ててマルコからハルタを奪い取るもその手はすぐに振り払われてしまった。
甲板でわんわん泣くハルタと傍に立つ二人に他の船員たちの視線が集まる。
「頼むから泣き止んでくれよ〜」
サッチが触ろうとしても余計に暴れだす。
「お前のせいだぞ!」
サッチはマルコを睨んだ。
「いつまでもあのままじゃいけねぇだろい」
「だからって泣かせんなよ。エースのときはちゃんとしてただろうが!」
「赤ん坊と一緒にするなよい。大体あいつはもっと素直だったよい」
「そういう問題じゃない!」
サッチがマルコに向き直り、本格的な言い争いが始まった。

「お前ら何してるんだ!」
言い争う二人に大きな体が割って入る。
「だから!……ジョズ?」
声を張り上げていたサッチが怪訝な顔をする。
マルコもジョズを見上げた。
そして次の瞬間、
「子供を放って何してるんだ!」
大きな雷が落とされた。


「う〜最悪だ」
「頭がいてぇよい」
雷と同時にダイアモンドの拳を食らったから堪ったものではない。
普段穏やかなジョズも厳しいときは厳しい。
二人をあれだけ悩ませた張本人は今はジョズと仲良くお絵かきしている。
「初めっからあいつが見てくれればよかったのに……」
「子育てなんてもう懲り懲りだよい」
二人仲良く痛む頭に顔をしかめつつ、楽しそうなジョズとハルタの姿を二人は眺めた。

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