嫌よ嫌よも?

空は青くて雲は白くて、波は穏やかでオヤジがグラグラ笑ってて、すっげェイイ感じな昼下がり。気温も高くもなく低くもなく、幸せだなァなんて思ってた。
急に電伝虫が鳴って、アイツの声が聞こえてくるまでは。


「どうしたサッチ?せっかく見つけてきた上物だぞ?」
「あー、うん、あんがと。ちゃんと飲んでるから気にしないでくれっていうか全力で無視してくれ」

現在、デッキに直で座り込んでちまちま飲んでるおれの隣には、オヤジと同じく四皇と呼ばれている男。赤髪のシャンクス。
もう既に頬を赤く染めていて、ほろ酔い…通り越して結構マワッてんなこりゃ。

何がおかしいのか杯片手に楽しそうに笑い、擦り寄ってくる。フザケて寄りかかって酒を煽るもんだから邪魔で仕方ねェ。(重いし)

いつの間にか赤髪が持参した酒で宴になっていた船の上。いつもマルコにラブコールを送っている男に、全力で絡まれていた。


「おい赤髪、おれなんかよりオヤジの相手してこいって」
「いーやーだー。おれはサッチがいい。なァ、おれの相手は嫌か?」
「ちょっ、…おま、本気酔いじゃねーか。ちょっと頭冷やしてこい」

もう、何処行ったんだよこいつのストッパーは!頼れる副船長は!!
ぐりぐりと人の胸に顔を押し付けてくるオッサンを引き剥がそうと四苦八苦しながら見回せば、上機嫌なオヤジと何か話をしてるベン・ベックマン。

2人とも楽しそうで、このはた迷惑なオッサンの世話をさせるために会話に捩じ込むのは申し訳ない。

「あーもー、何が悲しゅうてこんなヒゲのオッサンの相手しなきゃなんねェの!」
「っ」

自然な動作で肩にまわされた腕をベシッと叩き落とし、叫ぶ。ヒデェなーなんて笑う赤髪を押し返したその時、おれの右隣に座っていたマルコが不自然なほど大きく肩を震わせたのに気付いた。

「マルコ?どうかしたか?」

ジョッキを持ったまま俯いているマルコの顔を覗き込もうと体を屈ませれば、バッと顔が上げられ鼻と鼻が接触事故を起こしそうなくらい勢いで顔を近づけられ、思わず体を引いた。

「…サッチは!ヒゲのオッサンの相手は嫌なのかよい!」
「……は?」

ドンとジョッキを叩きつけるように置き叫んだマルコ。その言葉の内容を理解して、でもその意味が理解できなくてマヌケな声が出てしまった。
よくよく見ればマルコの顔は真っ赤で、耳まで赤い。吐く息も熱くて酒臭くて、相当酔ってるのがわかる。

「ヒゲが嫌なんだったらおれ、ちゃんと剃るよい!っていうか今から剃ってきてやるよい!!」
「おぁ!ちょ、おい!マルコって!!」

色々と理解できていないおれが引き止めるよりも早く、マルコ(超酔っ払い)は不死鳥の姿になってふらふら自室の方へ飛んで行ってしまった。

「モテる男はつらいねェ」
「ッちょ、放せって!」
「全く、マルコが羨ましいよ」
「え、なに、おれの話聞いてる?もしもーし!」

さっきまで傍観を決め込んでいた赤髪に後ろから腕を回され、引き寄せられる。体がぴったり密着した状態で耳に直接吹き込むように囁かれ、ゾワリと背中が震える。
その正体が何なのかを理解して、すぐさま暴れて体を離した。

「なァ、サッチ。」
「…ッ!」

正面から向き合って、赤髪を睨みつければ返ってくる真っ直ぐな視線。酒のせいだけとは思えない頬や目元の赤み。自分も同じような状態になってるような気がしないでもねェけど、これで流されたら大変な事になる。うん、そこだけは自信がある。

さっきまで飲んでた酒のように、どろりと蕩けた甘い声。耳から入って脳みそまで侵食していく錯覚に襲われながら、視線を逸らした。けれど、それすら許さないとでも言うように、言葉が追ってくる。

「おれはな、宝になんぞ興味はねェ。けど、欲しいモンはあるんだ」

妙に勘繰っちまわないように、逃げを打つが腕を掴まれ引き戻される。
とうとうぴったりとくっついてしまった体に、どうしようもなくて顔を上げれば。

「お前が欲しいんだよ、サッチ」
「、赤髪、おれは、…っ…んむぅ…ふっ、…ぁ」

真剣な瞳に視線を絡めとられて、言葉とともに唇を奪われた。何をされているのか、理解するよりも早くひどく熱い舌が滑り込んでくる。

ちゅぷちゅぷ、くちゃくちゃ。ヤラシイ水音が耳に響いて、先程の感覚が蘇ってくる。背中がぞわぞわして、腰が痺れて、股間に熱が集中する。

「っは、甘い」
「ッひ、ん」

抵抗なんてする間もなく、服越しにムスコに触れられ悲鳴のような声が出た。頭ではダメだって分かってるのに、確実に快楽だと分かる感覚に力が抜ける。


「や、」
「大丈夫だ。ちゃんとヨく」
「する前にちょっとこっちに来てもらおうか。変態。」

唐突に刺激が無くなって、いつの間にかキツく閉じてしまっていた目を開けば、逆光で顔が見えないベックマンに片腕で吊り上げられている赤髪。

顔面蒼白、怯えた小動物のようにぷるぷる震えて『スミマセンデシタ…』と小さく呟いている。
おまけにベックマンの後ろにはやっぱり逆光で表情の読めないオヤジが薙刀もってそびえ立っていて。


「さあサッチ、もう酔っ払いの相手はいいからシャワーでも浴びておいで」
「え…あ、うん」

にこやかに剣を抜いたビスタに背を押されデッキから船内へ入る。この世のものとは思えない絶叫が聞こえてきたような気がするが、シャワーで一緒に洗い流してやった。


END



『ゴムの木』の飴蛙様より2000hit企画でいただきました。
書かれる14の連載が大好きなのですが今回はまだ少ない赤4をリクエストさせていただきました。
自分の欲も交えて4←1要素も入れてもらいましたw
サッチも可愛かったけれどオヤジに惚れました!
逆光に佇むオヤジカッコいい・・・!!(●´Д`●)
四皇の変態っぷりについては言うことないですよね・・・!
同情の余地はない(笑)
本当にありがとうございました!


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